アルコール依存症の重度と中度の壁
私は中度のアルコール依存症です。アルコール依存症については何度か書いていますが、酒の飲み方や付き合い方、そもそもなぜ酒を飲んでしまうのか、ということは定期的に考えたくなるものです。今月から平日に飲まない生活を送っていることもあり、余計に酒のことを考えてしまいます。
アルコール依存症というと、紙パックの焼酎やカップの日本酒をあおり、饐えた臭いをまき散らす酔っ払ったオヤジを想像されるでしょうし、そのような人のことを「アル中」と呼んでいると思います。しかし、アルコール中毒とアルコール依存症は別物です。
- 中毒:ある物質が体の中に入って障害が起こった状態で、身体的な症状を表す
- 依存:薬物による快感を味わうためと、薬物がないことによる不快感から逃れるため、自分ではやめられない状態、精神的な症状を表す
精神的な症状ですから、酒を飲んでいなければ何の問題もありません。ただ、酒を飲んでいない素面の状態でも頭の中には常に酒のことがあるわけで、心と脳の病気です。自身の好みや意思とは関係なく、人格でもなく、明らかな病気です。
アルコール依存症の軽度や中度、重度の違いをものすごく簡単に言うと、次のような感じだと思っています。
- 軽度:少量でも毎晩、晩酌する
- 中度:飲んではいけないと分かっていても飲まずにいられない、周囲に隠れてこっそり飲む
- 重度:酒で大失敗して家族や仕事を失い路上生活
これまで何人かの重度のアルコール依存症を見てきた個人的な感想です。毎晩、晩酌する人などたくさんいますが、私は軽度のアルコール依存症だと思っています。また、中度は幅が広く、重度との間には高い壁があると考えています。9割の人は中度で止まるはずです。
「平日は飲まない」と決めれば何とかガマンできる私はまだ中度だと思っています。しかし、重度への壁を半分越えたことが何度かありました。瞬間的、衝動的に越えてはいけない一線を簡単に超えさせるのが酒の怖いところです。合法とはいえ、れっきとした薬物です。
私はいつか重度への壁を越えてしまうのではないかと怯えています。その怯えを抑えるためにまた飲むということもよくやります。いまは酒を上手にコントロールできていますが、心のバランスがいつ崩れ、衝動的になる可能性があります。いつからこうなったのやら。
アルコール依存症についてもう少し知りたい方は、これがおすすめです。へたな学術書などよりよっぽど理解できますし、実際に副読本に指定されている医学部もあるそうです。マンガとあなどることなかれ、名著です。