電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

アル中病棟

これまでたくさんの書籍を読んできましたが、私の人格形成に多大な影響を与えたタイトルがいくつかあります。バルザックの『幻滅』だったり、スタンダールの『赤と黒』だったり、三浦哲郎先生の『忍ぶ川』だったり、人生の節目で重要な書籍と出会いました。

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『失踪日記2 アル中病棟』もそんな書籍の1つです。先日、亡くなられた漫画家の吾妻ひでおさんの作品で、マンガとあなどることなかれ、アルコール依存症を理解するのにうってつけの名著です。実体験を元にしているわけですから、その辺の学術書などよりよっぽどためになります。

どれぐらいためになるかというと、新聞記者時代、アルコール依存症専門クリニックを受診したとき、医師から勧められたぐらいです。私はいまのところアルコールで問題を起こしたことはありませんし、新聞記者を辞めてからはずいぶん収まりましたが、かつては連続飲酒など危険な飲み方をしていました。

以前も書きましたが、新聞記者にはアルコール依存症が多くいます。特に全国紙の政治部や社会部の記者は程度の差こそあれほぼ全員がアルコールに頼っているはずですし、そういう記者を何人も見てきました。新聞記者は日々、半端ないプレッシャーに追い込まれています。

また、新聞社には上昇志向の強いエリートが集まります。他紙の記者を出し抜くことはもちろん、同僚の記者に先んじてスクープを報じて出世したいと思っています。毎日、社内外での競争にさらされています。競争を勝ち抜くには他人よりたくさん働くしかありませんし、事件は昼夜を問わず発生するため現実的に考えても長時間労働になります。

全国紙よりは多少緩い地方紙の記者だった私でさえ、無茶苦茶な働き方をしていました。久しぶりに自宅に帰ることができたものの、数時間後にはまた取材に出かけなければならず、しかし気が昂ぶってすぐに眠れないようなとき、手ごろなアルコールに手を出すわけです。

全国紙の記者はもっと過酷で、次の取材まで2~3時間しかないようなとき、ハイヤーの中で一瞬だけ眠るためにアルコールを摂取することもあります。その2~3時間を逃したら次にいつ眠れるか分からないからです。こうして気付いたときにはアルコール依存症になっています。

アルコールは覚醒剤と大差ありません。最近流行りのストロング系と呼ばれる缶チューハイは特に危険で、私は規制すべきと本気で思っています。あれはマジ、ヤバい。いま酒を手放せない人は『アル中病棟』を読んでみてください。もちろん、私もあらためて読み直していますが。

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟

 

吾妻ひでおさんに合掌。