電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

74年後の平和な光景

  • 大きなスーツケースを持って羽田空港行きの電車に乗る家族連れ
  • 海水浴のことを嬉しそうに話す麦藁帽子をかぶった子ども
  • ネズミの国に行くらしい若いカップル
  • 氷結ストロングの500ml缶を朝からあおるオヤジ

すべて今朝の京急で見られた光景です。かくいう私はスマホでヤフーニュースを見て、ひと通り目を通してからディズニーツムツムを始めました。74年前、こんな平和な日常を想像できた人はいたのでしょうか。

きょうは74回目の終戦記念日です。いつもと同じ時間の電車の同じ場所に立ち、同じ場所で降り、クーラーが効いたオフィスでPCに向かっていられることがどれだけ幸せなことか、考えています。

これまで何度か書いていますが、私の父方の祖父はシベリア帰り、私に瓜二つだという祖父の弟は神風特攻隊として出撃したままです。この話を初めて聞いた中学生のころから、夏になると戦争について考えています。

『きけ わだつみのこえ』という学徒兵の遺書を集めた遺稿集があります。高校生のころに初めて読み、衝撃を受けましたが、東大や京大の出身者ばかりだったのが妙に引っかかりました。

祖父や祖父の弟はいまでいう高卒ですが、これですら決して多くなく、中卒や小学校卒が大多数だった時代です。文字が分からなくて遺書を書けなかった戦没者も決して少なくなかったはずです。

三島由紀夫は『きけ わだつみのこえ』について「テメエはインテリだから偉い、大学生がむりやり殺されたんだからかわいそうだ、それじゃ小学校しか出ていないで兵隊にいって死んだやつはどうなる」と批判しています。

私は三島由紀夫が嫌い(ついでにいうと太宰治はもっと嫌い)ですが、この批判にだけは納得です。大卒であろうが中卒、小学校卒であろうが、戦没者に差はありません。

シベリアの寒さはどれほどのものだったのか、戦闘機で敵艦に突っ込む瞬間に何を考えていたのか、それを聞くことはできません。主観を極力、排除した史実を見聞きし、忘れないようにするのみです。

74年前といまで同じことは、夏の暑さでしょうか。