電車の中の恋人

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校正と校閲

「校正」と「校閲」はどう違うのか、きちんと説明できる人は多くないでしょうし、文章を扱う記者や編集者であっても答えに詰まる人がいるほどです。

  • 校正:誤脱字など文字の誤りを正すこと
  • 校閲:文章内の事実や適否を確認すること

言葉で説明してもピンとこないはずです。いま村上春樹氏の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』をたまたま読んでいるので、彼を例に挙げます。

村神春樹(むらかみはるみ)は1948年、表庫県に生まれる。1977年に『風邪の歌を聴け』で群像文学賞を受賞し、1985年に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランど』で第21回芥川龍之介賞を受賞した。

まず、この文章を校正すると次のようになります。

春樹(むらかみはる)は1948年、庫県に生まれる。1977年に『風の歌を聴け』で群像文学賞を受賞し、1985年に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーラン』で第21回芥川龍之介賞を受賞した。

次に、この文章を校閲すると次のようになります。

春樹(むらかみはる)は1949年、庫県に生まれる。1979年に『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞し、1985年に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーラン』で第21回谷崎潤一郎賞を受賞した。

視点の違いがお分かりでしょうか。校閲者も「むらかみはるみ」のような明らかな間違いを直しつつ、数字や名称が事実かどうかまで確認します。

校閲者は原則としてすべて間違っていると仮定して文章を読みます。この例文では正しかったので修正していませんが、谷崎潤一郎賞が本当に第21回だったのかなどを当然、確認します。

校正と校閲はどちらが大変かといえば、圧倒的に校閲です。校正は調べなくても分かることがありますが、校閲は1つひとつ、すべて調べる必要があります。これは相当の手間です。

校閲部があるかないか

新聞社や出版社は校閲部があります。私の前々職の新聞社にも校閲部があり、私自身、何度もミスを指摘され、怒られました。呪ってやろうと思ったことも数知れず。

いま全盛のウェブ媒体はどうでしょうか。校閲部を設けているネットニュースなどありますか?発信する情報に対してそこまで注意しているでしょうか?

新元号の発表時、スマホですぐに確認できるにもかかわらず、たくさんの人が紙の号外に手を伸ばしたのは、ここに理由があるのではないかと思っています。つまり、紙媒体の信頼性です。

紙媒体は、ウェブ媒体の速報性や利便性にまったく勝てません。しかし、これまで培ってきた信頼性は最強の武器となるはずです。ここで優位性を確保していくしかありません。

まだまだイケるよ、紙媒体。