本が読めない
「本が読めないってどういうことですか?」
マンガの話を書いたときにサラッと触れたことに質問をいただきました。確かに書籍編集者のくせに書籍が読めないというのは不思議に思われるでしょう。
書籍の編集を始めてから、私は書籍を読むのではなく見るようになってしまいました。書籍を手に取ったとき、私の頭の中は次のことを考えています。
- 索引の充実度
- 目次と構成
- 本文フォント
- 見出しフォント
- 和文フォント
- 英文フォント
- ノンブルフォント
- 本文フォント級数
- 見出しフォント級数
- 見出しレベル
- 1行の文字数
- 文字間
- 1ページの行数
- 行間
- 柱
- ツメ
- 箇条書きの記号
- トビラの有無
- 白ページの有無
- ページ数と折
- 紙の素材
- 表紙の素材
- 見返しの紙の素材と色
- カバーの紙と加工
- デザイナー
- DTP
- 印刷会社
とりあえずパッと思いついたことだけを挙げましたが、これ以外にも色々な部分を見ます。定価を確認して原価や利益率も考えていますし。
これに自分とは違う表記ルールが使われていたり、自分であれば直す部分がママになっていたりするわけです。気になってしまい、書籍の内容などまったく頭に入ってきません。
本が大好きで編集者になったのに本が読めなくなるというこの矛盾。もちろん、私のような編集者ばかりではありませんが、好きなことを仕事にしてはいけないという典型例です。
最後の書籍を校了してからもうすぐ1年です。制作だけ担当し、刊行は他の版元からという不完全燃焼で終わりましたが、私が制作したという事実は変わりません。
書籍の制作から離れたせいか、少しずつ読めるようなってきました。ライトな小説であれば少し引っかかる程度なので、通勤の京急でいまはこんなものを読んでいます。
もう少し重めの書籍を読めるようになるにはまだ時間が必要なようです。