電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

超就職氷河期世代の気持ち

池井戸潤氏の『半沢直樹』シリーズにおける傑作は第3作の『ロスジェネの逆襲』だと思っています。ドラマ化を待ち続けていたので4月放送開始が新型コロナウイルス感染症のせいで延期になったときはがっかりしましたが、7月19日(日)からようやく放送されるようです。

サラリーマンになって20年弱、▽社員数約300人の地方紙記者▽社員数約1万5,000人の外資系出版社▽社員数約10万人の外資系医薬・ヘルスケア企業の記者兼編集者――と3社を渡り歩く中で、常に出世争いや派閥抗争に直面してきました。特に新卒で入社した地方紙では派閥抗争がきっかけで辞めることになりました。

私は記者・編集という、どちかといえば専門職で、浮世の出世争いに参戦せず、自身のスキルを追求していく職人系ですが、常に周囲は上昇志向が強い人間ばかりで、私自身も上昇志向が強いこともあり、気付いたら出世争いに参戦していました。

この根底にあるのは、超就職氷河期世代としての経験です。2001年に大学を卒業するに当たり、2000年に経験した就職活動は一生、忘れることができません。私は運良く新卒で就職できましたが、会社説明会で暑い会場の中、「暑いですよね。単なる説明会ですので楽にしてください」と言ってジャケットを脱いだ学生に「いま楽にした学生はお帰りください」と言った企業のことは絶対に忘れません。

出世争いや派閥抗争など、本当にくだらないことだと思います。しかし、存在を否定され続けた超就職氷河期世代は、団塊の世代やバブル世代である上を蹴落とすことでしかアイデンティティを保つことができないのです。世代論などいつの時代にもあることですが、その世代の当事者にとっては、言わずにはいられないことです。

『ロスジェネの逆襲』をベースとした半沢直樹シリーズが放送されることで、あのころに就職活動した世代の気持ちが少しでも伝われば、と思うわけです。