電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

また新卒採用を抑えたら今度こそ日本経済は終わるはず

何度か書いているように、私は超就職氷河期世代です。1977年に生まれ、大学受験で1浪したので1997年に大学に入学し、2001年に卒業しました。1990年代後半から2000年代前半までが就職氷河期と呼ばれますが、その中でも2000~02年の3年間は特にどん底と言われています。私はそのど真ん中にいたわけです。

異常と言っても過言ではないほどに正社員の身分を守る日本の労働法制において、解雇はまず不可能です。利益が減り、給料を払うのが苦しくても解雇できないのであれば、入ってくる人員を減らすしかなく、新卒採用を急激に圧縮しました。

そのときは上手くいきました。政権が労働者派遣法などを改正し、企業は正社員に対するほどの義務や責任を負わず、安価かつ都合良く労働力を確保できるようになりました。必要なときだけコキ使い、不要になったらすぐに捨てる、使いやすい人員があふれました。

その結果として起きたのが人材不足です。就職氷河期世代はいま、30代後半から40代前半です。本来であれば、着々と知識と経験を積み、気力・体力ともに充実した働き盛りとして、所属企業はもちろん、日本経済をけん引する存在となっていたはずです。

しかし、とりあえず目先の不景気を乗り越えるために当時の新卒採用を抑えたせいで、知識と経験を身に付け、管理職としての資質を養った人材が少なくなっています。好景気で大量採用した50代と30代前半の間がぽっかり空いてしまっているわけです。

人材育成とは、時間をかけて自身で実践することで身に付く要素が多く、一瞬のひらめきや資料などだけで管理職として企業を引っ張っていく人材は生まれません。あのときに採用し、あのときからきちんと育てていなければなりませんでした。

もういまとなっては取り返しがつきません。数少ない管理職としての資質を養ってきた貴重な人材を奪い合うしかなく、そこで負けた企業は退場するしかありません。人材育成の重要性を見誤ったことによる自業自得です。

ただ、これを踏まえて、今回は失敗しないようにしてもらいたいと思います。新型コロナウイルス感染症の収束後、未曾有の大不況が襲ってくるはずです。2021年3月に高校や大学を卒業する学生の採用は苦しいと思いますが、彼らが日本経済の中心を担うであろう20年後を視野に入れてほしいのです。

私たちの世代はもうどうしようもありません。だから、せめていまの若い世代の可能性をつぶさないでほしいと思っています。目先の不景気を乗り越えられたとしても、20年後に優秀な人材がいなければ倒産します。そのための施策を講じてもらいたいわけです。

私の両親は団塊の世代で、その子どもたちも多く、少ない正社員枠を大人数で取り合う羽目になりましたが、2021年3月卒の若者は私の世代より多くないはずです。前年や前々年より絞らざるを得ないことは仕方ありませんが、2001年と同じようなことだけは避けてほしいと切に願っています。

それにしても、話題になった就職氷河期世代の救済策はどこにいってしまったのか。さすがに公務員の特別採用は面倒な手続きを経て予算を確保したので止まっていないはずですが、それ以外は進んでいるのでしょうか。つくづく時代に翻弄される運が悪い世代です。