電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

内定辞退率が売れるということは売り手市場であることの裏返し

新卒・中途に限らず、採用活動にはかなりの時間と労力を要します。それは採用する側であっても採用される側であっても同じことで、内定を出した人にはすんなり入社してもらいたいですし、他社を断る労力を使わず最初に内定が出たところにすんなり入社したいものです。

採用される側は、採用する側の立場をなかなか理解できず、少なくとも気持ちの面では上下関係の下になります。「落ちた」「他の人が受かった」と思うのではなく「落とされた」と感じ、恨みます。採用する側は常に強い存在であるわけです。

しかし、その関係は内定を境に逆転します。採用される側は選ぶ側になり、採用する側は選ばれる側になります。そして、両方の側を経験して思うのは、採用する側のほうがストライクゾーンが狭く、内定を辞退されるとものすごく困るということです。

ストライクゾーン

もちろん採用される側も入れればどんな会社でもよいというわけではありませんが、それでもストライクゾーンは広く設定し、少しボール気味でもよしとします。一方、採用する側は細かい条件に合致した人でなければならず、完全なストライクを求めます。

選びに選び、選び抜いた末に内定を出した人には何としても入ってもらいたい、もし辞退されたらそれまでの時間と労力は水の泡でまた初めからやり直し、しかも完全なストライクが来る可能性は低く、来たとしてもそれがいつになるのか分かりません。

ただ、それはあくまで採用する側の都合であって、採用される側にも都合があります。「そんなに来てほしいなら高い給料を提示するとか、入りたいと思う条件を出せ」と思いますし、それが無理なら辞退されても仕方ありません。採用される側にとっては「知らんがな」です。

本音は欲しいのだろう

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内定を辞退されると困る気持ちはよく分かりますし、その可能性が分かるデータは欲しいでしょう。このニュースが報じられた8月、某社で人事課長をやっている親友も「ホントにこんなデータがあるならほしい、というのが正直な気持ち」と言っていました。

各社とも採用活動には利用していないと言っていますが、まあ嘘でしょう。評価が同じAさんとBさんがいたとして、どちらか1人しか採用できないとなったとき、Bさんのほうが少しだけ内定辞退の可能性が高いと分かったら、Aさんを採用するでしょう。

こんなデータが売れる時代

なお、私はまったく違うことを考えました。自分が就職活動した超就職氷河期にこんなデータ売れるか?ということです。答えはもちろん否です。1つでも内定が出れば御の字だったので辞退しようがありませんし、企業側も内定を辞退されるなど思ってもいなかったはずです。

超就職氷河期だったあのころ、内定を辞退する人など滅多にいなかったわけですから、辞退率など算出することができなかったはずです。いまはそれだけ辞退できる、こんなデータを作れるほど1人が複数の内定を得ているということです。

こんなデータが必要になる、売れるということは、やはり新卒学生の売り手市場であることの裏返しではないでしょうか。情報を無断で利用された学生は不信感を持ち、その気持ちはよく分かりますが、超就職氷河期世代にとっては羨ましいと思えてしまう事件でもあるわけです。