電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

ある日の仕事で書いたコラム

きょうは何時に帰れるか分からず(まだ残業中)、家に着いたらバタンキューだと思われるので、仕事で書いたコラムを。こんな感じのものを週10本、仕事で書いております。

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◆訪日外国人旅行者の診療費はどれぐらいが妥当なのか

 観光立国の実現に向けた政府主導の施策によって訪日外国人旅行者数は年々、増加しています。さらに、来年の東京オリンピック・パラリンピックで爆発的な増加が見込まれ、政府は訪日外国人旅行者数の目標値を、2020年に4,000万人、30年に6,000万人と設定し、約4兆円の旅行消費に加え、宿泊業を始めとする幅広い産業への投資など、日本経済に与える好影響に大きな期待を寄せています。

 訪日外国人旅行者が増加すれば、病気やけがで旅行中に医療機関を受診する外国人が必然的に増えます。しかし、外国人患者はどこに行けばよいか分からず、医療機関は言語対応や費用請求をどうすればよいか分からず、混乱を招きかねません。これらを解消するために、厚生労働省は検討会を設置し、想定される様々な課題について議論しています。

 医療機関にとって切実な問題は医療費の請求でしょう。訪日外国人旅行者は日本の健康保険に加入していないため、受診は自由診療になりますが、厚労省の調査によると、訪日外国人旅行者を受け入れた病院のうち約90%が診療報酬点数表を活用して1点10円で請求していました。

 また、診療の際に障害となる言語対応で、診療費以外の追加費用として医療通訳費を請求した病院は約1%だけでした。診療費は医療機関が自由に設定できますし、医療通訳費は自由診療だけでなく社会保険診療でも患者に請求できますが、これらのことが広く知られていない可能性があります。

 訪日外国人旅行者の患者は、日本人と同じ診療行為でも通常より時間も労力もコストもかかり、通訳やタブレット端末などによる多言語化の費用も要します。8月19日の検討会では「外国人患者を受け入れる医療機関リスト」への掲載に医療機関が積極的でないことが課題として挙がりましたが、その一因が医療機関にとってメリットがなく、受け入れてもコスト割れになることだと見られています。

 しかし、だからといって法外な価格を設定することはトラブルの元ですし、「コスト割れしない価格」も明確でなく、受け入れないほうが楽という結論にいたるわけです。現在、厚生労働科学特別研究事業として、訪日外国人の診療価格算定方法マニュアルの策定が進められており、一定の目安となることが期待されています。

 外国人患者は現時点でも医療機関を受診していますし、診療費の請求などで悩んでいる医療機関があるはずです。また、これは決して都市部だけの問題ではありません。地方のあまり知られていない場所を訪れる外国人旅行者がいるでしょうし、入管法改正で人材が不足している過疎地域で働き始める外国人も増えていくでしょう。来年の東京オリンピック・パラリンピックに備えるのではなく、目の前の課題解決のため、マニュアルの迅速な策定、公開が必要となっています。