電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

文字は読むものか、見るものか

文字は読むものなのか、それとも見るものなのか。

「カタカナを多用するな、漢字と平仮名に直せ」と新聞記者時代に何度も言われました。画数が多い漢字と比べてカタカナは軽く見え、ポップな印象を与えます。

それは時に物事の本質を気付きにくくします。そうして聞き心地の良い言葉を並べることで本当に大切なことを曖昧にするのは政治家の常套手段です。

もちろん、カタカナのママのほうが正確に伝わることもあります。ただ「情報技術」と言えば済むことを、なぜ「インフォメーションテクノロジー」と言う必要があるのか。

「情報技術」という言葉も曖昧ですが、「インフォメーションテクノロジー」という言葉はさらに曖昧です。何となくそれっぽいから用いられるのではないかと思います。

文字を見せる

私の新しい上司は電通出身です。広告代理店の業務とはそれっぽい言葉を並べてそれっぽいスライドを作り、それっぽいプレゼンでクライアントを煙に巻くのが仕事です。

決して馬鹿にしているわけではありませんし、むしろ褒めています。新聞社時代も出版社時代も電通と仕事をしたことがありますが、私が出会った電通社員はみんな超優秀でした。

上司が作るパワポは見た目も良く、それを説明する話術も巧みで、もし何か商品の売り込みに来てこれをやられたら契約書に即、判子を押してしまうだろうと思うほどです。

ぱっと見の印象

先日、上司に校正を頼まれましたスライドに「スキル」という言葉があり、何だか無理やり当てているように感じたので「技能」という漢字に直すことを提案しました。

スキル

技能

どちらも言わんとすることは同じですが、PCやスマホ、タブレットの画面で見た印象はどうでしょうか。カタカナのほうがスタイリッシュで軽やかな感じがするのではないでしょうか。

文字は読ませるものなのか、それとも見せるものなのか。漢字といえども絵文字が発展した象形文字がルーツなわけで、そう考えると目に見せるのがそもそもの始まりであって。

こんなことは正直言ってどうでもよいことですが、記者や編集者は変なところが気になって仕方ない生き物です。難しくもあり、でもこういうことを考えるのが楽しかったりします。