若造侮ることなかれ
「こんな若造で大丈夫なのか?」「これだから最近の若いヤツは」― 新聞記者として駆け出しだったころによく言われたことです。
行政であれ民間であれ、マスコミの取材に対応するのはそれなりの責任や権限を持った人であり、必然的に年齢を重ねた人が多くなります。
当時はベンチャーや若手起業家という言葉が少しずつ聞かれるようになったころで、当然ながら私と同年代などおらず、取材対象は両親と同年代がほとんどでした。
1年目は取材に行く先々で冒頭のような対応を受けましたし、実際にまだよく分かっていない若造で、何度も悔しい思いをしました。
先輩記者と2人で行ったときにはよく喋ったにも関わらず、後日、私が1人で行ったときは露骨に不満そうな態度を取り、爪を切りながら数分で取材を打ち切る人もいました。
年長者はそれだけで敬うべき存在ですが、それを勘違いし、無為に過ごしてきただけなのに先に生まれただけで偉いと思っている人がいることも事実です。
それと同時に、まだそれほど経験を積んでいない若者であっても尊敬すべき人はたくさんいますし、実際に私の周囲にもいます。
人と接する際、年齢は当てになりませんし、雰囲気や見た目で判断してはいけません。
これまで若いというだけで見下され、さらにブサイクということで疎まれた経験から、私は年齢や見た目で判断することは絶対にしないよう心がけています。
先ほどベースのメンテナンスをお願いするためにリペアショップに行ってきました。オーナーであると同時にリペアマンである男性は若く、30歳になったばかりです。
楽器のリペアは職人の世界です。職人の世界は経験が物を言うものであることは確かですが、それだけでもありません。
長い経験を積んでいても惰性で続けてきた職人は腕が良くありませんし、経験は短くとも試行錯誤を重ねながら真摯に取り組んできた職人は確かな腕を身に付けています。
自宅から近い場所でリペアショップを探していて、たまたまネットで見つけたところだったので、初めてうかがったときは確かに不安でした。
しかし、二言三言話してみただけでこれまでの経験やそれに基づく考え方が分かりましたし、安心して任せたところやはり抜群の出来でした。
それ以来、半年に1度のメンテナンスをお願いしていますし、多くのベーシスト仲間がお願いするようになりました。
「ずずずさんのおかげでお客さんが増えました」とよくお礼を言われますが、私のおかげなどおこがましく、彼の実力です。
彼の腕があればいずれ必ず繁盛していたはずですし、もし私のおかげというのであれば、その時期がほんの少し早まっただけでしょう。
愛器は来週、仕上がって戻ってきます。そして再来週は新年1本目のライブです。楽しみです。