電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

若草色

私のデスクで右を向くと桜が見えます。

小さな公園ですが、遊具などは何もなく、ベンチが数個置かれているだけの広場で、そこに桜が数本植えられています。まだちらほらとですが、咲き始めています。

来週は満開になっているかもしれません。キレイに咲くと、近くのお弁当屋でから揚げ弁当を買い、外でお昼ごはんにします。ひんやりした風が気持ち良いのです。

ふみちゃんの服装もずいぶんと春らしくなっていました。昨日は厚手のコートを着ていたものの中は若草色のセーター、今日はコートではなくジャケットのようなものでした。

オフィス周辺で新入社員らしき若者を見かけるようになりました。彼らは無地の白いYシャツにストライプのネクタイ、ジャケットのボタンを律儀にとめているのですぐに分かります。

新しい生活が始まる季節です。誰もが晴れ晴れとした表情で、これから起こるであろうさまざまな出来事に期待していることがうかがえます。

一方、私は新たな一歩を踏み出せず、同じ場所に立ち止まっています。毎朝、コーヒースペースからふみちゃんを眺め続けているだけです。

これもまた1つの生き方です。ふみちゃんが私の前から姿を消すその日まで、ふみちゃんを遠くから眺めることぐらい許してほしいと思うのです。