電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

今日の常識は明日の非常識

「オレたちは傭兵と同じ。とにかく今日を生き抜くことだけ考える。明日いきなりクビになるかもしれないのに1年後のことなんて分からないし、ましてや定年まで働けるだなんて考えたことすらない」

昨夜、学生時代の先輩と数年ぶりに会ってきました。先輩は新卒でメガバンクに入社し、3年で外資系製薬会社の医薬情報担当者、いわゆるMRに転職し、もう10年以上、外資系で生き延びています。

MRは給料の高さから新卒・中途を問わず注目の職種ですが、その分、業務も半端ではありません。さらに、それが外資系ともなれば文字通り戦場で、2期連続で目標を達成できなかったらクビです。

その代わり、達成したときの見返りも半端ではありません。特に先輩の会社が扱っている医薬品は特殊なので、成約時に500万円のインセンティブが出ることも珍しくないそうです。世間一般がイメージする、いわゆる外資系です。

外資系の人事は単なる雑用で日系のような人事権などないこと、お互い他部署のことなんてどうでもよいこと、かといって自分のことだけ考えていればよいというわけでもなくて日系のように人そのものを意外と見ていること…色んな話をしました。

日系企業に勤める高校時代からの付き合いの親友に話したときは、正直言って違和感がありました。部長をダイレクターと呼んだり、課長をマネージャーと呼んだり、経理をファイナンスと呼んだり、といった表面的なことだけではありません。外資系と日系では根本的な部分が異なるため、微妙に話が噛み合わないのです。

それが昨夜はすべてに納得がいきました。それと同時に、外資系と日系の違いをあらためて実感しました。これは一度、外資系を経験してみないと分からないと思います。日系企業の経験しかない人には絶対に理解できない感覚です。

「日系に戻りたいと思うか?」― 帰り際、聞かれました。少し迷いましたが、答えはNoです。ちなみに先輩は即答でNoです。別に日系が良くないというわけではありませんし、そもそも良い悪いというレベルの問題ではありません。

ただ“明日いきなりクビになる”というのが決して冗談ではなく、本当に起こりうることで、これによる緊張感がたまらなかったりするのです。強すぎる刺激が癖になりつつあります。何でこんな世界に身を置いているのか。

解雇通告を受けてから1か月、考え方が180度変わってしまった気がします。人格形成が完了したこの年になって、ここまで価値観を大きく揺さぶられるとは思ってもみませんでした。タイトルは昨夜、先輩に言われたことで、これを心から理解できてしまう自分がいるのです。