夢で逢えたら
金曜日の夜に限ってふみちゃんの夢を見ます。
この前と同じように、私がオフィスから出たところでふみちゃんに遭遇し、やはりふみちゃんは私の中をすっとすり抜けていきました。
ふみちゃんにとって私は道端の石ころと同じで、視界の隅にすら入らないわけです。後ろ姿を眺めていても、ふみちゃんが振り返ることなどありません。
仕方ありません、これが私の立ち位置です。これまでの人生もいつもこうでしたので慣れっこです。せめて夢で逢えただけでも良しとすべきです。
今夜はメインバンドのライブです。オーディションのほうに集中しすぎてついこちらが疎かになっていたので、起きてから練習していたのですが、弦を切ってしまいました。
ベースやギターの弦は張り替えた直後だと伸びます。チューニングしても音程が安定しないので、リハやライブを控えていたらせめて3日前には張り替えなければなりません。
ライブ当日に張り替えることなど通常はありえませんが、荒れた気持ちで弾いたせいでしょう。楽器に限らず、荒れた気持ちで何かをしてはいけません。
直前まで自分で弦を引っ張って演奏中の伸びをできるだけ抑えるようにしつつ、1曲終わるたびにチューニングして気をつけます。
今夜は『夢で逢えたら』をインストにアレンジして初披露します。いつか鈴木雅之さんのバックバンドでこの曲を演奏してみたいところです。
スカウト
「ずずずさんにスカウトが届きました!」
昨年の夏、書籍出版事業の廃止と解雇宣告を受け、エージェントへの連絡から無料の転職サイトへの登録まで、ありとあらゆる手を打ちました。
結果的にはウェブ媒体への異動で現職に残っているわけですが、またいつ何が起こるか分からないため、転職サイトへの登録はママにしてあります。
しかし、転職はやはりエージェントに限ります。無料の転職サイトは募集企業も応募者も“下手な鉄砲も数打ちゃ当たる”というスタンスです。
私にもかなりのスカウトが届くのですが、業種は大体、決まっていて、
・塾講師
・タクシーの運転手
・外壁塗装の営業
・パチンコ店のスタッフ
ばかりです。
“登録してあるずずずさんのキャリアを拝見し、当社で活躍していただけると思い、ご連絡しました”と名前の部分だけを変えたと思われるテンプレートメールが大量に届きます。
新聞記者と編集者のキャリアがなぜタクシーの運転手やパチンコ店のスタッフに活かせるのか、一度でよいから問い詰めてみたいところです。
件名に社名が入っているのでそのテのメールはごみ箱に直行ですが、今日はぴくりと反応してしまうスカウトが届き、つい開いてしまいました。
「有限会社プレステージ様からスカウトが届きました!」
「まさか?」と思いましたが、それなりにありそうな社名です。職種は広報、撮影アシスタント、総務となっています。ホームページを開いてみました。
いつも大変お世話になっております!
はい、AVメーカーです。『働くオンナ』シリーズを初めて見たときは衝撃を受けました。「こ、こんなかわいい子がAVに出るなんてすげーな!」と。
真面目な話、エロというものはとても優良なビジネスの1つです。VHSとベータによる「ビデオ戦争」と呼ばれるビデオの規格争いにケリをつけたのはAVという一説があるほどです。
求人情報を見てみると、給料は決して悪くない水準ですし、福利厚生もしっかりしているようです。文面からはとても優良企業のように見えます。
マテ!
ほんの少しだけ気持ちがぐらつきましたが、趣味と実益を兼ねると良いことなどありません。しかも凝り性の私がAV業界に入ろうものなら大変なことになるのが目に見えています。
それにしても、AVメーカーが転職サイトに求人を出す、さらにスカウトまで送るということに時代は変わったとしみじみ思います。
子どもが将来就きたい職業にキャバ嬢がランクインされたと聞いたときに衝撃を受けましたが、いずれAV女優がランクインするときがくるのかもしれません。
ちなみにスカウトに応募していませんので、悪しからず。