歯牙移植
歯が取れた。
正確には歯に被せていたものが取れたわけですが。例のイギリス人の同僚がくれたミルキーを噛んでいたらくっついて取れてしまったというお約束の展開です。
歯科医院に行ってまた着けてもらえばよいのですが、歯科医院であればどこでもよいわけではなく、以前に住んでいたマンションの近くの歯科医院でなければなりません。
“歯牙移植”というものをご存じでしょうか。歯が抜けてしまった箇所に親知らずなど使われていない歯を移植するものです。
歯が抜けてしまったら、チタンを歯根として埋め込んで歯を作るインプラントが知られていますが、歯牙移植は親知らずをチタンの歯根代わりにするのです。
もちろん簡単にできるものではありません。親知らずがあること、抜けた箇所と親知らずの大きさが合っていることなど、いくつかの条件があります。
ただ、インプラントと違って元々は自身の身体の一部です。拒絶反応やアレルギーなどは少なく、かなりの確率で骨に定着します。
また、保険が適用されます。私がやったときは確か5,000円ぐらいだったはずです。しかし、保険が適用されるにはすべてを同日で終わらせないといけないという条件があります(いまは制度が変わり、同日でなくてもよくなったそうです)。
私が歯科医院に行ったのは虫歯の治療のつもりだったのですが、歯が割れてしまっているので抜くしかないと言われ、そこで歯牙移植をすすめられました。
同日で終わらせるということはつまり、割れてしまった歯と親知らずの都合2本の歯を同時に抜くということです。1本でも嫌なのに2本も抜くとは…。
しかし、やりました。まず“ギューッ”と引っ張って割れた歯を、次に“バキッ”とやって親知らずを抜き、最後に親知らずを“ブスッ”と差しました。これを固定して終わりです。
その瞬間は麻酔が効いているのでそれほど痛くありませんが、その日の夜は鈍痛で眠れませんでした。酒も飲めず、のたうちまわりました。
ただ、3か月後ぐらいにレントゲンを撮ると移植した親知らずのまわりに少しずつ骨ができているのが分かり、人間の身体の神秘を実感しました。
半年後ぐらいになるともうしっかり骨に着いているので、これを削って形を整え、上に被せて終わりです。先ほど、この被せたものが取れました。
以前に住んでいたマンションといっても同じ横浜市内ですのでそれほど時間はかかりませんが、行くと必ず何か見つけられ、しばらく通うことになります。
かわいい歯科衛生士さんがいましたが、私の治療が終わる前に寿退職してしまいました。新たなかわいい歯科衛生士さんがいれば通うのも苦ではないのですが。