本と書籍
「“本”と“書籍”ってどう違うんですか?」
「“本編集部”ではなく“書籍編集部”と言うのはなぜですか?」
「“電子本”ではなく“電子書籍”と言うのはなぜですか?」
…(汗)
5月1日から編集部の隣の島にあるITサポートに新人さん(中途)が入社しました。ITサポートとは社内のPCやネットワークなど、社員のIT環境を担当する部署です。
これまでITに関する仕事を続けてきたのですが、本が大好きで、出版社のIT部門で働くことが念願だったそうです。自身の業務そっちのけで編集部に食いついてきました。
今日の昼休み、私のほか雑誌編集部のメンバーをつかまえて、冒頭の質問を矢継ぎ早に繰り出してきたわけです。編集部員はみんなタジタジです。
出版社の編集者でありながらお恥ずかしい限りですが、あまりにも日常のことすぎてまったく考えたこともありませんでした。
正直言って分からねぇ…。
“書籍”とは字音で読まれる漢語で、紙が発明される前の時代に竹に書き記していたものを集めて編んだもので、竹冠の“籍”という文字が生まれた…云々。
「“本”とは、表紙はページ数に入れず、本文が少なくとも49ページ以上から成る、印刷された非定期刊行物を指す」とユネスコ総会で採択された国際的基準…云々。
概念的なことは説明できるのですが、あくまでも“何となく”であり、彼を納得させられるだけの十分な説明ができませんでした。いやはや、お恥ずかしい。
彼に質問されてふと気づきました。編集者になってから、仕事は何をしているのかと聞かれた際「書籍を制作しています」と答えていることに、です。
「本を作っています」でも十分、伝わるはずですが、なぜか“書籍”と答えています。無意識的に使い分けていたようです。
連休直前に根本的な問いを投げかけられてしまいました。連休中も仕事が山積みなのに哲学的な宿題が課されました。困った、どうしよう。