電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

呪われた書籍

「ずずずさんにもお世話になりました」

唯一残っていた書店営業が退職することになり、今日が最終出社日でした。月刊誌は残るのに今後どうするのか心配ですが、それはダイレクターが考えることです。

書籍出版事業の廃止の決定以降、脱稿していたものの制作を始めていなかったタイトルは著者と協議の上で他社に版権を売り、引き取ってもらいました。

ただ、著者が大御所すぎて、途中で他社に売り渡したら今後のビジネスに影響があると判断されたタイトルは、弊社で刊行することになりました。

私がいま制作を担当しているのはこれらのタイトルで、まさに敗戦処理といった具合です。ここまで6タイトルを刊行してきましたが、ようやく残り1タイトルとなりました。

最後に残った1タイトルは企画に2年を費やし、昨年の夏から刊行が始まったシリーズものです。このシリーズは社を代表する書籍となる一大プロジェクト扱いでした。

しかし、シリーズのうち2タイトルを刊行したところで書籍出版事業の廃止が決定しました。そこから、このシリーズに携わったスタッフが次々と退職していきました。

・最初の発案者
・途中でサポートに入ったスタッフ
・制作をメインでやることになったスタッフ
・アシスタントその1
・アシスタントその2
・書店営業のマネージャー
・書店営業のスタッフ(今日の退職者)

さらに委託先の制作会社のDTPも途中で退職しました。社内だけでなく社外にまで影響を及ぼすとは、呪われた書籍なのではないかと思ってしまいます。

書籍出版事業の廃止が決まったのですから、編集者が辞めていくのは当然と言えば当然ですが、他のタイトルを担当したスタッフは残っています。

また、委託先の制作会社のDTPも以前から退職しようと思っていて、偶然にも時期が重なっただけなのかもしれません。

ただ、シリーズの完了前に途中で退職していくスタッフが8人も発生したのはどうしても気になってしまいます。このシリーズに携わったスタッフだけ去っていくのです。

そして、このシリーズに携わっている最後の1人が私です。最後に残った1タイトルが刊行されたところで私も退職することになるのか。

「このシリーズに携わった人間はみんな辞めていきますよね」― 退職の挨拶回りに来た書店営業と冗談半分で話していました。

刊行をもって完了ではなく、このシリーズに携わった最後の1人である私が退職して、ようやく完了と呼べるのかもしれません。

刊行予定は6月となっています。約1か月後、どのような状態になっているのか、自分でも分かりません。