電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

先輩からの誘い

「お前もうちにこないか?」― 私の周りの世界が寝静まり、ゲラのチェックを始めたところでメールが届きました。某出版社で副編集長を務めている学生時代の先輩からです。現職の元後輩の転職先でもあります。

解雇通告を受けた編集部のメンバーのうち、元後輩には社内での別ポジションへの配置転換が提示されず、私が先輩にお願いして面接の機会を作りました。私はあくまでもきっかけを作ったに過ぎず、採用に至ったのは元後輩の実力によるものです。

元後輩は10月からそこで仕事をしているのですが、早くも新天地になじみ、高評価を受けているそうです。本人からもたまにLINEで連絡がきますが、やりがいをもって仕事に臨んでいるようです。間を取り持った私としても嬉しい限りです。

元後輩の仕事ぶりを見た編集長が「○○(私の先輩)の学生時代の後輩で、○○くん(元後輩)の先輩であるなら、信頼の置ける編集者なのではないか」と言い、私に転職の話を持ちかけたとのことです。

内々の話ですが、来年、現編集長が取締役となり、副編集長である私の学生時代の先輩が編集長になるそうです。その後を継いで副編集長にどうか、という話がきたのです。“寝耳に水”とはまさにこういうことを言うのだと思います。

今回の書籍がもしかしたらメインの編集者として人生最後のものになるかもしれない、そしてそれはとても悲しい、ということは先輩にも話しています。たぶん、それも誘いの一因になっているのでしょう。

事情を話して元後輩を紹介した際、「本当はお前のほうが欲しいが、お前のいまの年収は出せない」と先輩に言われていました。自分で言うのもなんですが、私はそれほど安くありません。

しかし、事情が変わって先輩が編集長になることになり、現状維持で私を迎えられることになったそうです。正直言って、独り身の私にとってお金はそれほど重要ではないのですが、目に見える形での評価という意味では重視します。

そこは明治時代に創業した老舗出版社です。一般書からコミックまで取り扱う総合出版社で、小学館講談社ほど名前が知られているわけではありませんが、「これ知ってる!」と誰もが言うような書籍を何冊も手がけています。

週明けに入稿でいま追い込んでいるということまでは先輩に話していません。先輩は一刻も早く、ということでメールをくれたのだと思います。ただ、いまはタイミングが悪いです、先輩。

心が乱れ、集中力が切れました。心に隙間ができるとすぐにふみちゃんが入ってくるため、ゲラのチェックをやっているどころではありません。今夜は大人しく眠るしかないようです。

参ったぞ!