電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

“伝える”と“伝わる”

来週のオーディションの課題曲がとても難しいのです。

3曲のうち1曲はノリノリのファンクチューン、もう1曲は王道のソウルナンバーです。この2曲は何とかなりそうだという手応えを感じています。

問題は残る1曲です。2人の女性ボーカルの声が映えるしっとりしたソウルバラードなのですが、少ない音数の“間”(ま)を聴かせることがとにかく難しいのです。

“これでもか!”と指が速く動くフレーズのほうが難しく見えますが、楽器を弾く上で本当に難しいのはゆったりしたフレーズです。

人前で話すとき、言葉の間に「えー」と挟む人がいます。「えー、その件につきましては、えー、ただいま我々のチームが、えー」というやつです。

これは沈黙が苦しく、間をもたせたいと思ってつい発してしまう言葉です。ほとんどの人が無意識的に発しているのではないかと思います。

ただ、これは聞き手に対してあまり良い印象を与えません。聞いている側も無意識的に「何だか耳障りだ」と思っていることがほとんどです。

この点で完ぺきなのが、小泉純一郎元首相と息子である小泉進次郎議員です。テレビなどで話している姿を見る機会があったら注意してみてください。絶対に「えー」とは言いません。

新聞記者時代にどちらにも囲み取材をしたことがありましたが、後から録音を聞いてみると絶対に「えー」と言っていないのです。

政策についての議論はさておき、この2人の演説は多くの人々を惹きつけます。「えー」と絶対に言わないことが大きな理由の1つであると思っています。

演奏も同じです。何も弾いていない状態が苦しく、つい余計な音を入れてしまったり、待ちきれなくて速くなったりしてしまいます。

課題曲のソウルバラードがまさにこの状態です。音と音の間が長く、どうしても待ちきれないのです。そして、台無しになってしまいます。

音数が少なく、単に弾くだけであれば簡単で、いまでも十分弾けています。しかし、聴き手に“伝わる”演奏ができないのです。

“伝える”ことと“伝わる”ことには大きな壁があります。この壁を乗り越えられた人がプロの表現者であるわけです。作家しかり、ミュージシャンしかり、政治家しかり。

課題曲でベースを弾いているのはバンドを抜けることになったベーシストです。とても上手で、プロとして十分、続けていける実力があると思います。

ただ、同じベーシストとして、間を伝えることに難儀していることが何となく伝わってきます。それが分かったから抜けることにしたのかもしれません。

まいったな…私も“伝わる”演奏ができないんだけど…。

オーディションに参加すると言ってしまったからには最善を尽くします。メンバーに伝わるかどうかは分かりませんが。

ちなみに、このソウルバラードの曲名ですが、

『届かぬ想い』

というのです。

知ってか知らずか、こんな名前の曲をよりにもよって私に弾かせるなんて。いや、メンバーが私のふみちゃんへの想いを知っているわけなどないのですが。

必ず最後にオチがつく芸人体質はもう嫌(涙)。