覆水盆に返らず
昨年末に刊行した書籍3タイトルが売れています。このうち2タイトルは過去のヒット作の改訂だったので一定の売り上げが見込めていたのですが、残りの1タイトルが予想以上に売れています。
私が企画から制作までを担当したものの、他社に流通と販売をお願いせざるをえなかった例のタイトルです。編集しながら「これは売れる!」と思っていましたが、正直言ってここまでとは思いませんでした。
すでに3刷まで版を重ねており、4刷の検討を始めたほどだそうです。老舗の版元で営業体制が弊社より強力ということがあるのですが、それでも専門書で4刷は滅多にありません。
アマゾンのランキングは1桁台で、売れ行きが好調で現在、在庫切れとなっています。また、そのジャンルの“ほしい物リスト”で1位になっています。
アマゾンのほしい物リストはブラウザのブックマークと同じようなもので、パッと目についたものを次々に登録していけるため、本当に購入されるかどうかは分かりません。
しかし、それでも多くの人にほしいと思ってもらえているのは担当編集としてとても嬉しいものです。アマゾンに早く納品され、1冊でも多く売れてほしいと思っています。
書籍制作の最終目標は、1人でも多くの読者に読んでもらうことです。
「これは世の中のたくさんの人に知ってもらいたい」と思って企画し、著者と二人三脚で校正を重ね、苦労して刊行した書籍が読者の手に取ってもらえること以上の喜びはありません。
それが他社から刊行されても、です。売れても弊社には1円も入ってきませんが、企画途中や脱稿原稿を他社に渡したタイトルも多かった中で、刊行まで自分で編集できたのは不幸中の幸いでした。
「売れそうな企画が残ってたりしないよな」― 先ほど営業のダイレクターに聞かれました。売り上げの費目を変えて営業に付け足せるものを探しているそうです。
営業の今年の売り上げ目標がとんでもなく大変なものになっているのは私も知っています。協力できることがあれば協力したいと思っています。
しかし、どの面下げてそのセリフを私に言えるんだ?書籍出版事業の廃止を決めた1人だし、このタイトルをうちから刊行することに断固反対したくせに。
このタイトルを弊社から刊行していたらそれなりの売り上げになっていたはずです。著者は続編も検討していたので、さらに売れることも見込めます。
ここまで分かりやすい“覆水盆に返らず”の例を間近で見ることも珍しいと感心しますが、私はもう書籍の企画をすることはありません。淡々とウェブの編集を進めるのみです。
それにしても、アマゾンを開くたびに表示される、
バレンタイン特集2017
は何とかならぬものか。恵まれないブサイクに愛の手を差し伸べてくれる天使をまだまだ絶賛募集中です。なお、合いの手は間に合っておりますので、悪しからず。