電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

壁に耳あり

「夏ごろから電車で毎日一緒になる男の人がいて、クリスマスまでに声をかけようと思っていたのにできなかった」― ついたての向こうから女性の声が聞こえてきて、耳がダンボになりました。

出社してPCを立ち上げてからコーヒーを淹れるのが私の日課ですが、忙しくないときはコーヒースペースにノートPCを持っていって、コーヒーを飲みながらソファに座って偉そうにメールチェックしています。

ついたての向こうはカスタマーサポートの電話オペレーターのデスクで、20人ぐらいの女性がいるのですが、私はまったく関わったことがありません。派遣スタッフさんがメインのようで、頻繁に入れ替わるようですし。

私がいる位置とその女性の間にはついたてだけでなく小さなテーブルがあり、さらにホワイトボードで仕切られています。私の姿は見えませんし、私がそこにいることにも気付いていないでしょう。

「実は同じような人がたくさんいるんじゃないかと思ってネットで調べてみたら2ちゃんねるとかいっぱいあるんだよね。読みながら“うんうん、そうそう”って同じ悩みの人がいて安心しちゃった」

そうでしょう、そうでしょう…ただ、あなたはそうして同僚に話せているだけでも良いほうだと思います。電車で見かける見ず知らずの異性を好きになったなど恥ずかしくて誰にも言えないほうが普通です。

「調べてたらブログを書いている人も見つけたんだ。その人は男性で、詳しくは分からないけど失敗しちゃったみたいで。都内の人みたいなんだけど」

…まさかと思いますが、そのブログとはここのことではないと思いたい。とりあえず私の姿を見られないようにコーヒースペースからそーっと退避してデスクに戻りました。

もし、そのブログがここのことであれば、これをアップするとここにいる人間だということまでは分かってしまいますが、このフロアには100人以上いますし、ところどころフェイクを交えているので、私を特定することは絶対にできまい。

それにその女性は今日が最後だそうです。年明けからは別の派遣先に行くようで、それもあってクリスマスまでに声をかけたかったのでしょう…ここまで書いたら、もしかして自分のことなのではないかと気づくかも。

大抵の男性は女性に声をかけられて悪い気はしないはずですし、今日が最後であればがんばって話しかければよかったのに、と思いますが、それがいかに難しいかはよく分かります。

当分は引きずるでしょうし、無理に忘れようとする必要もないと思います。ふと気づいたら好きな人が新しくできていた、となれるようお祈りしています。今後も暇なときにここを覗いていただけるとありがたいです。