電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

内に秘めた熱さ

「ふざけんな!お前らなんかに俺たちがどんな思いで本を作ってきたか、何が分かるっていうんだ!」―ふだんは静かなフロアに午後、怒声が響きました。声が人事のスペースのほうから聞こえたので、そのときデスクにいた編集部のメンバーは瞬間的にそちらに向かいました。

“人事は常に開かれているべき”という綺麗事の下、弊社の人事のスペースは透明のガラスで仕切られています。私のデスクからは後方になるのですが、振り返った瞬間に編集部の同僚が立ち上がっている姿が目に入り、「まさか『重版出来!』のあの場面じゃねーよな」と思いながら、私もすぐに向かいました。

先月まで放送されていた『重版出来!』という、週刊コミック誌の編集部を舞台に、新人編集者の奮闘を描いたドラマをご覧になっていた方、いらっしゃるでしょうか。第6話は全編集者が涙する内容でした。

登場人物の中に「作品の良し悪しなんて関係ない。売れた作品が良い作品であって、売れなきゃ意味がない」と言い切る、夢もへったくれもない編集者が出てきます。私のようにある程度の年数を経た編集者であれば納得できる部分も多々あるのですが、主人公の新人編集者は反発します。

その編集者は過去、作家と公私ともにタッグを組んで良い作品を世に送り出すことだけを考えている熱いハートの持ち主でした。しかし、編集部員の思いを考慮せずに数字だけを見て自身の担当コミック誌を廃刊にした経営層に幻滅し、作家をないがしろにしてでも売り上げのみを追求する冷めた編集者に変わってしまった、という設定です。

熱い編集者がなぜ冷めた編集者に変わってしまったのか、過去を描いたのが第6話でした。その中で、廃刊を決めた経営層に対して「ふざけんな!」と噛みついた場面があり、怒声が響いた瞬間、その場面とシンクロしました。そして、実際にその通りでした。

今日、キレた同僚はふだん、どちらかというとクールな雰囲気です。先週、書籍出版事業からの完全撤退が発表されたときも「まあ売れてないっていうんじゃ仕方ないよな…」と静かに受け止めていたのです。私は、キレるなら他のヤツと思っていたので、彼がキレたのは意外でした。内面はそんなに熱かったのか。

彼はクビではなく、社内の別ポジションへの配置転換を提示されたそうです。ただ、編集の仕事ではなく、営業のサポート的ポジションです。これまで培ってきた専門知識を生かし、営業に同行してクライアントに弊社のサービスをプレゼンする職種です。「もったいねぇ」―彼のことをよく知る編集部員であればみんなそう思います。

こんな場面を見せられると、どうしても仕事に集中できず、「打ち合わせで外出してそのまま帰ります」と16時過ぎに会社を出てしまいました。近所の川を眺め、缶チューハイを飲みながらタバコをふかします。

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きょう、私にも人事からInvitationが届きました。私は木曜日の午後です。キレないように気を付けます。