電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

営業は楽しい仕事(条件付き)

営業は楽しい仕事だと思います。クライアントに会ってお話しして、課題があれば解決できるよう協力して、解決できれば感謝されて、たまに一緒に飲みに行ったりして、日々、とても充実するのではないかと思います。

ただし、数字さえなければ。

数字がない営業なんて営業ではありません。「営業は楽しい仕事。ただし、数字さえなければ」というのはそもそもロジックが成り立たないわけで、矛盾したことを言ってみました。

クライアントとどれだけ良い関係を築いたとしても、数字を上げられなければ営業失格です。私は記者時代、取材先と良好な関係を築いていたと自負していますが、それは数字が絡んでいないからできたことであって、もし数字が絡んできたらそこまでの関係は築けなかったと思います。

私に営業は絶対にできません。営業の数字に対するプレッシャーはものすごいですし、私にそれに耐えられるだけの強いメンタルはありません。記者時代もいまも、営業を尊敬しています。私にできないことをやっていますし、営業がお金を取ってきてくれるからこそ、記事を書いたり書籍を作ったりできるわけですから。

記者時代、営業の同期に頼まれてクライアントのところに同行し、10万円で広告を出してもらうために土下座したことがあります。別に土下座など大したことではありませんし、どちらかというと面白がっていたのですが、同期に何度も謝られました。

新聞記者はなかなか珍しい存在のようで、よく営業に同行を頼まれて、都合が合えば同行していました。私自身も読者の声を聞きたいということもありましたし。純粋に新聞記者というものを見てみたいという人や、事業に繋がる紙面に載らない情報を得たいと思っている人、紙面について直接苦情を言いたい人、色々な人がいました。

そういう人たちのなかでごく稀に、新聞記者が嫌いで、自分の前に跪かせたいと思っている人がいます。「俺たちはこんなに苦労しているのに良い給料もらって偉そうにしやがって」と思っているようです。別に全然、偉くないのですが、どうもそう見られることもあるようで。

私が土下座した相手はその地域の顔役というか「あの人が広告を出すならうちも」という影響力を持った人で、同期は以前から何度も足を運んでいたところ「記者を連れてこい」となり、私に頼んできたのです。同期は気の良いやつですし、その気の良さのせいで数字がいま一つと小耳に挟んでいたので、喜んで同行しました。

そういう人、顔を合わせただけですぐに分かります。「あっ、この人、新聞記者が嫌いなんだ」って。応接セットにふんぞり返って足を組んで、私が名刺を出しても鼻で笑ってテーブルにポイッと投げて。ごみ箱に投げられなかっただけまだマシですが。

案の定「お前ら新聞記者はゴミだ」「偉そうにしやがって」「俺ら貧乏人を見下しているんだろう」「給料は俺らの何倍もらっているんだ?」―など、ひどい言われよう。新聞記者に何か嫌なことをされたのかな、と思いながら右から左に聞き流していました。

頃合いを見て同期が「それで広告の件なんですが…」と切り出したところ、私を見て「金を出してほしければ、それなりの礼儀なり作法っていうもんがあるだろう」と言い、私がきょとんとしていると指で床を指すのです。「あー、土下座か!本当にこんなこと言う人いるんだ」と、ちょっぴり感動しつつ面白くもあり、神妙な顔をしながらも実はウキウキで土下座したことは秘密です。

ただ、土下座だけさせて結局お金を出さない人もいる中で、その人はきちんと10万円で広告を出してくれました。根は悪い人でなかったのかもしれません。同期も何とか目標をクリアできました。

ちなみに、それ以降、私を気に入ってくれて頻繁に飲みに行くようになったり、広告を定期的に出してくれるようになった…というきれいなオチはなく、広告を出したのはそのとき1回だけ、しかもその約1年後に倒産してしまい、2度と会うこともありませんでした。

あす5日(火)とあさって6日(水)、営業に同行して大阪に出張です。土下座させるようなクライアントではありませんし、そもそもお金を出してくれることは決まっていて、どういうものにしようかという打ち合わせです。営業が感謝されるよう、サポートできればと思っています。

そう、2日間も大阪出張ということは、2日間も彼女に会えないということです。毎日がんばっているのに何たる仕打ち。この会社はいったいどうなっているのでしょうか。あまりの寂しさに死んでしまうかもしれません。うわ~ん。

今日の都内は朝から猛烈な暑さです。同僚が席に着くなり「日本の暑さは異常だ。溶けてしまいそうだ」と文句を言っていましたが、私は今朝の彼女が相変わらずかわゆく、彼女のあまりのかわゆさに溶けてしまいそうでした。彼女のかわゆさに当てられて溶けて死んでしまうのであれば本望です。