電車の中の恋人

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キレイな文章の書き方のコツ(第5回)

「このような観点から見ると」

原稿を読んでいて引っかかりました。「観」と「見」の重ね言葉、「頭痛が痛い」と同じ類のものではないかと思ったわけですが、調べてみたところ重ね言葉ではなく、間違った使い方でもありませんでした。

大辞林によると、観点とは「物事を考察・判断するときの立場。見地」のことです。あくまでも観る点、立場を指すだけであって、見たり考えたりする“行為”までは意味に含んでいません。

「観点から見る」のほかに似たようなものを挙げると「寝室で寝る」「飲み物を飲む」「座席に座る」などがあります。書きながら少しモヤッとしましたが、これらも間違いではありません。

英語でも「from ~ point of view」という同様の言い方があります。例えば「From technical point of view(技術的な観点から)」という具合です。英語だとまったくモヤッとしません。

漢字の多くは目で見たままを描いた象形から成り立っています。「観」という字は「鸛(コウノトリ)」と「見」を合わせて作られました。なお「見」の象形は人です。漢字は目から入る情報が大きいので妙にモヤモヤします。

間違いではないと分かってもモヤッとするのであれば言い換えればよいわけです。例えば「観点からすると」「観点に立つと」といった具合です。でも「寝室で寝る」は言い換えられない…どうしよう。

編集者とは、言葉についてどうでもよいことが気になってしまう面倒な生き物です。それと同時に、キレイな文章を書けるようになるまでの道程は長く、険しいものであることを痛感します。