キレイな文章の書き方のコツ(第4回)
「月100時間未満、2~6か月の平均80時間以下、年720時間以下」が大企業に適応となりました。中小企業は2020年から適応となります。
著者から上がってきた原稿を読んで違和感を覚えました。働き方改革に関するものですが、私はこれを「適用されました」「適用されます」と修正しました。今回のテーマは「適用」と「適応」についてです。
- 適用:法律・規則・原理などをあてはめて用いること
- 適応:その場の状態・条件などによくあてはまること
大抵の国語辞典でこのように書かれています。つまり、
- 「…にあてはめる」と言い換えられたら「適用」
- 「…にあてはまる」と言い換えられたら「適応」
と言えます。
「適用」を使ってみる
「適用」の例文です。
- カルロス・ゴーン容疑者の逮捕に会社法を適用する
- 社員に副業禁止の就業規則を適用する
「適用」を「あてはめる」に言い換えてみます。
- カルロス・ゴーン容疑者の逮捕に会社法をあてはめる
- 社員に副業禁止の就業規則をあてはめる
まずこんな言い方はしませんが、意味は通じます。
「適応」を使ってみる
「適応」の例文です。
- 就活ルール廃止後の新たな就職活動に適応する
- 引っ越し先の新しい環境に適応する
「適応」を「あてはまる」に言い換えてみます。
- 就活ルール廃止後の新たな就職活動にあてはまる
- 引っ越し先の新しい環境にあてはまる
こちらもこんな言い方はしませんが、意味は通じます。
受動的か能動的か
「適用」は法律や規則などすでにあるルールに合わせることを求められます。嫌でも逆らえないので受動的と言えます。
これに対して「適応」は自分から周囲に合わせているので能動的ですし、「慣れる」とも言い換えることもできます。
ここで冒頭に戻ると「適応」でないことが分かると思います。企業は働き方改革関連法に否応なく従わなければならず、ルールに合わせることを求められているので「適用」になります。
無意識に正しく使い分けている人がほとんどだと思いますが、いろいろな媒体で書き慣れている人でも間違えることがあります。文章については一生、勉強しないといけないようです。