電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

未熟な中間管理職

1名は二次面接へ、1名はお見送り ― 今日の面接の結果です。

二次面接へ進むのは応募書類を見て縁を感じた方です。スキルやキャリアは申し分ありませんし、受け答えがしっかりしていて、終わりのほうは雑談で盛り上がりました。

この方であれば問題なく一緒に仕事をしていけると思いましたし、次のマネジャーやダイレクターに「お前は人を見る目がないのか」と怒られる心配はないと思います。

もう1名の方は大変申し訳ありませんがお見送りとさせていただくつもりです。第一印象や受け答えなど人としての雰囲気は良かったのですが、スキルが足りていません。

「どのようなジャンルでもよいので書籍を1冊、初めから終わりまで担当した経験がある方(雑誌・ムック本は除く)」― 求めるスキルとして今回、これを挙げさせてもらいました。私は書籍を1冊担当すればどこにいってもそれなりに使える能力が身に付くと思っています。

書籍の制作には、世間のニーズを的確に掴んだ企画立案、著者探し・交渉、編集・校正といった基本的な編集スキルに加え、予算を踏まえた上での売り上げ予測・管理など、さまざまな能力が求められます。

また、著者やデザイナー、印刷会社など社外の人間だけでなく、営業やマーケティングなど社内の人間と販売計画についてやり合うことも多々あるため、粘り強い交渉力が必要です。

弊社は版元ではありませんが、書籍を1冊担当した経験があれば何にでも応用が利くと思いますし、今回は版元を経験した上で書籍に限らず幅広く制作していきたいと思っている人にきていただきたいと考えています。

この方、書類は完璧でしたし、エージェントからも条件を満たしていると聞いていました。ただ、よく話してみると、書籍の制作はメインの編集者のアシスタントとしてしか携わったことがないとのことでした。

アシスタントといっても、制作の実作業はもちろん、企画につながるアイディア出しや著者を含む外部とのやり取りを担当したことがあるそうです。それなりの経験を積んでいます。

しかし、少し細かい部分になると詰まりますし、書籍1冊といわなくとも案件を1つ、安心して丸っと任せられるかと考えたときに、どうしても頼りなさを感じてしまいました。

「条件を完全に満たしていませんが、それに近い経験を積んできた自信があるので、面接で話す機会をいただけないでしょうか」と初めに伝えられていたら印象が変わっていたと思います。

経験が多少足りなかったとしても、後からカバーするという熱意と、実際にカバーできそうだという印象を与えてくれれば、通過させても良かったと思っています。

ただ、言いにくい気持ちは分からないでもありませんし、こういうことを伝えるためにエージェントがいるのではないかと思いましたが、後出しされてしまうと少し印象が悪くなってしまいます。

お見送りの連絡をすると「私を落とすなんて人を見る目がないやつだ」「人を馬鹿にしやがって」などと恨まれるかもしれませんし、私自身も人を評価できるほどの器ではないと分かっています。

しかし、これも私の役割であり、仕事です。好きなことだけやって許される年齢ではありませんし、編集の実作業以外のことまで求められて入社しているのですから、期待に応える必要があります。

これまで落ちるたびに辛い思いをしてきましたが、立場が変わって落とす側になっても辛いことに変わりません。気分的には落ちるほうがまだマシだと思ってしまう未熟な中間管理職です。