電車の中の恋人

悠々自適なアラフォー独身貴族の日常

時代に翻弄され続ける世代

「オレらと同い年ぐらいの中堅世代、数年後には各部門の実務のトップになって引っ張っていってくれるような人材を探しているんだけど、全然見つからないんだよ」

風邪薬と睡眠導入剤が効き始めてウトウトしていた午前0時過ぎ、親友から電話がかかってきました。菱形が3つ組み合わさった某財閥系企業で採用人事を担当しています。

彼がいま上から課されているミッションは、40〜42歳の即戦力で数年後には各事業部長になり得る人材を複数人、採用することです。先週末の連休も応募者との面接ですべて出社したそうです。

「1人でも採用できれば御の字。複数人はいくらなんでも無理だろう」— 身体が辛いときに話を聞かされて少しイラッとしたせいもありますが、遠慮が不要の仲なのではっきり言いました。

いま40〜42歳というと、1976〜78年生まれです。この年代が大卒で就職活動したとき、新卒の採用状況は就職氷河期の中でも特に厳しい時期でした。この時期に新卒採用を抑制した日系企業はいま、ツケを払わなければならないことに気付き始めています。

サラリーマン生活が15年を超え、キャリアを積み、スキルを磨き、気力も体力も最高潮に達しつつあり、仮に新卒時に入社したところにずっと残っていれば周囲をグイグイと引っ張っている年齢です。

しかし、新卒原理主義の日系企業は目先の対応に追われ、この年代を採用せず、将来を見据えた育成を放棄しました。その結果、次のエース候補がいなくなってしまいました。

そんな時代でも採用され、着実にキャリアを積んできた人材はただでさえ少なく、どの企業も喉から手が出るほど欲しいので引く手あまたです。よほどの好条件でなければ見つかりません。

彼の会社は決して給料が安いわけでなく、むしろ高いぐらいですし、福利厚生が抜群です。事業内容は手堅く、伝統があり、安定性の面では魅力的な会社だと思います。

ただ、この年代は基本的に組織を信用していません。社会に出るときに散々、痛い目に遭ったので、頼れるのは自分だけという考えが根付いています。福利厚生や安定性は重視しません。

要は「自分をいくらで買ってくれるか?」です。もちろん、全員がそうではありませんが、少なくとも彼が探すよう言われているのはこういう人材です。逆に金さえ積めばすぐに見つかるはずです。

この年代、人数は多いのです。親は団塊の世代で、郊外に一軒家を買って子どもを2〜3人育てるのが当たり前という価値観を持っています。だから頭数は不足していません。

しかし、新卒カードを切ることに失敗したらそれで人生終わりというのが日本です。彼の会社の希望を満たすぐらいに優秀な人材がいたとしても、新卒からずっとフリーターなどであれば検討すらしません。

彼はその辺がよく分かっていますし、即戦力でなくとも数年は育てるつもりで30代後半まで幅を広げるべきだと言っているそうですが、すべて却下されているそうです。

しかも、子会社のくせに財閥系という変なプライドがあり、上にいくのは生え抜きのみ、中途入社はほどほどのところで打ち止めだそうです。彼自身、中途入社です。

ほどほどの報酬しか払わずに優秀な人間がほしい、でもがんばっても上限は決まっているなど、見つかるわけがありません。現実を知らない老害の話を散々聞かされてすっかり目が覚めてしまいました。

時代に翻弄され続けるこの世代、10年後はどうなっているのか…と考え始めてしまい、寝ついたのは結局、午前3時すぎでした。今日はついに激しい咳が出ています。

いま私とディープキスするともれなく風邪ウィルスをプレゼントします。ウィルスになってあの子の身体の隅から隅まで駆け巡り、細胞レベルで結合したいという変態チックな妄想をしているうちはまだ元気です。