電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

人の振り見て

書籍や雑誌、カタログなど印刷物の制作は何段階にも工程が分かれていますし、それだけ関わる人が多くなりますが、編集者はその中でも上流の工程にいます。

何もないところから企画を考え出すという時点で最上流にいますし、その後も編集者の作業や指示を受けて動き出す後工程の人がいます。

例えば、編集者から原稿や画像、図などの素材をもらってからゲラに組み上げるDTPは、編集者の作業が終わるまで動けません。ひたすら待つのみです。

工程の上流にいる人は後工程のことを忘れてしまいがちです。「自分は定時内で作業を終えたのに何が悪い?」と言う人がごく稀にいますが、それでは後工程の人はいつ作業するのでしょうか。

また、そういう人に限って「明日の朝までに仕上げて」と言います。納期は決まっているので、自分の着手が遅くて無駄に消費してしまった時間のツケを後工程に押し付けるわけです。

結果的に後工程は徹夜や休日出勤など無理を強いられます。そういったことを想像できず、工程の上流にいるから自分は偉いと勘違いしている編集者は少なくありません。

私はこれまで新聞社の記者、版元の編集者と最上流の工程しか経験していませんが、新卒で入社した新聞社での初めての上司が常に後工程のことを考える人でした。

「制作部が紙面を組む時間を常に考えて書け」と口うるさく言われ、初めはうっとうしかったのですが、いまとなってはとてもありがたいことだったと思っています。

いくらがんばっても後工程にしわ寄せがいってしまうことはどうしてもあります。ただ、普段から後工程に気を遣って仕事をしていると、そういうときに「君だったら仕方ないな」と無理をしてくれます。そのような関係を築くことが記者や編集者には求められます。

こだわりがあるのは理解できますが、それを差し引いても「お前がこれだけ止めてるせいで後工程がどれだけ苦労するか分かってんの?」と言いたくなる人がいます。

いくら優秀でも、人の心を考えないと仕事は上手く回りません。そして、そういった人の振りを見て我が振りを直すことが大切なのだと思っています。