電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

採用面接

採用はとても難しいものです。

「人事担当者は毎年、数百人もの就職希望者に会うから、使えるか使えないかすぐに分かる」とよく耳にしますが、そんなことは嘘っぱちだと思います。

数十分から1時間弱の会話で相手の人となりなど分かるわけがありません。もし、それでも「自分は分かる」という人がいたら、私はその人と仲良くなれないだろうと思います。

これまで採用される側はもちろん採用する側を経験したこともあります。服装がだらしなかったり、こちらのことをまったく調べていなかったり、明らかに不採用と判断できる人はいます。

ただ、そのような人はごくまれであり、ほとんどの人は何とか採用されようと必死ですし、中には私が知らない自社のことまで知っている人もいます。

採用される側は何とか自分を良く見せようとします。それは当然のことで、それが盛っていることなのか、自然に振る舞っていることなのか、数十分で分かることではありません。

「この人なら大丈夫」と思って採用したら失敗だったことは何度もありますし、不採用にしてしまった人の中にとても優秀な人がいたかもしれません。

「その一瞬で自分を上手に売り込めなかったほうが悪い。それも能力のうちだ」と言う人もいるでしょうし、確かにそうなのでしょうけど、そう言い切ってしまってよいのか、いつも不安になります。

人事経験が長い友人から電話がありました。自分が採用した新人がきょう、辞めてしまったそうです。4月1日入社でまだ1週間しか経っていないのに。

「その新人を採用するために不採用とした人に申し訳ない。自分の人を見る目のなさが情けない」と言っていましたが、かける言葉が見つかりませんでした。

パリパリのリクルートスーツを着ていても、新生活に心弾む新入社員と、就職活動真っ只中の学生の区別はつきます。街中や電車で学生を見かけるたびに「がんばれ」と心の中でつぶやいています。

不採用になるたび、自分自身を全否定された気持ちになると思います。私自身、超就職氷河期世代で、何度も不採用通知を受け取ったので、気持ちは痛いほどよく分かります。

ただ、採用する側も聖人君子ではありませんし、迷いに迷い、苦渋の思いで不採用としていることを知ってもらいたいわけです。決して自分が悪かったわけでなく、他の人が少しだけ良かったというだけのことですから。