電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

名刺

○○新聞○○支局
記者

就職して初めて名刺をもらったときの誇らしい気持ちをいまでもよく覚えています。同じような人は少なくないのではないでしょうか。

パソコンやプリンターが家庭にあることが当たり前のようになり、専用用紙も豊富に揃い、名刺など珍しいものではありません。持とうと思えば学生はもちろん子どもでも持てる時代です。

新聞記者時代にマスコミを目指す大学生の集まりで講師を頼まれたことがあるのですが、出席者の何人もの大学生から自作の名刺をもらって驚いたものです。

そう、名刺などただの小さな紙っぺらです。そこから分かることといえば名前と所属だけです。その人を表すことはなく、内面など少しも分かりません。

しかし、初めて名刺交換をするとき、自分が何者かになったような気持ちになりました。自分の背後に会社があり、自分が会社を代表していると思ったものです。

私の名刺にはいま、社名と部署名の後に「チーフエディター」と書かれています。もう編集者ではありませんが。

名刺入れを整理しながらまじまじと自分の名刺を見つめ「自分はいったい何者なんだろう」と考え込んでしまいました。そして自分が何者でもないことに気づき、静かに酒を飲む月曜日の夜です。