電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

表裏一体

「急性心不全としか発表されていないので私もよく分かりませんが、いずれにしても1日をしっかり生きていくことが大切だと思いますね」

親父の主治医は私の1歳上という同年代で、それを知ってから仲良くなりました。飲みに行くのは彼が忙しくてまだ実現していませんが。

親父は特に大事にならず、若い看護師さんを見るたびに「息子(=私)の嫁にどうだい?」と声をかけるなどピンピンしています。

これ以上、入院させておくとさらに恥ずかしいことをやらかしそうでさっさと引き取りたいのですが、もう少し様子を見たいとのことです。

人気俳優の急逝が世間を騒がせています。私も大好きな俳優だったので本当に残念ですが、それ以上に親父は大丈夫かと慌てました。

親父は69歳で、急逝した人気俳優と同年代です。病院に話を聞きに行くときと重なったのは偶然ですが、正直言って焦りました。

主治医の彼は仕事柄、多くの死に立ち会ってきました。一方、私は医療と何の関係もない仕事ですが、年齢の割には多くの死に直面しているかもしれません。

高校時代に同級生が1人、学生時代に同期が2人、後輩が1人、就職してからは大学院に進んだ先輩が1人の計5人が自殺しています。

また、新聞記者時代には先輩が2人、それぞれ癌とくも膜下出血で亡くなっています。さらに昨年は同い年のバンド仲間を1人、亡くしました。

いずれも葬儀に参列したり、人目を気にして葬儀をしなかったものの実家で線香をあげさせてもらったり、それなりに近しい関係でした。

人の死に直面するたび、いつも頭の中が乱れます。そこで考えたことを上手に説明する言葉はいまだに見つかりませんが。

人はみんな、自分が死ぬことなど考えられません。「何となく私は死なない気がする」という根拠のない自信を持っていますし、それは仕方ないことだと思います。実際、私も同じです。

ただ、ほんの少しだけでも「明日、死ぬかもしれない」と思うだけで、毎日が少しだけ変わるのではないかと思っています。死と生は表裏一体、死を意識することは同時に生を意識することでもあります。

…ということを頭で理解していても、なかなか実践できないのが人です。いまの私の頭の中は「お昼ごはん、何にしよっかな~♪」ということでいっぱい、凡人です。