電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

女性を泣かせる

「私はいつも人の顔色をうかがいながら生きてきたから」― 景子さんは心の機微にとても敏感です。

景子さんの昔のことについて知っているのは少しだけです。ただ、物心ついたころから、自分の身体に違和感があったそうです。

自我が芽生え、多感な思春期に何を考えながら過ごしてきたのか、それがどれだけ辛かったかは想像に難くありません。

「あの子のこと、考えてるんでしょ?」― 静かにゆっくりと寿司を堪能し、2件目のバーで飲んでいるときに突然、聞かれました。

自分ではまったく気づいていなかったのですが、心ここにあらずだったようです。「何を考えているのか分からない」とよく言われるのですが。

確かに昨夜、私はずっと考え事をしていたのですが、先に言っておくとふみちゃんのことを考えていたわけではなく、仕事のことを考えていました。

ふみちゃんのことが頭の中にまったくなかったと言ったら嘘になりますが、まず仕事のことで悩み、その延長線上で景子さんのことをどうしようかと考えていました。

ただ、景子さんにそんな風に思わせてしまったことが情けないわけで。いい年した大人のくせに、私は心の機微に疎いようです。

私は嘘が大嫌いです。日々の生活で嘘をつくことだけはしないよう、心がけています。特に景子さんのような人は嘘をすぐに見破ります。正直に話しました。

「ずずずくんに彼女ができてもいいし、他の女の子と結婚してもいい。たまにこうして会ってくれるだけでいいから」

泣かせちゃった…。

いまはとにかく仕事をどうしようかということで頭がいっぱいだったのですが、そんな風に思わせてしまったことが本当に情けないのです。

大先輩にバレたらきっとグーで殴られると思います。大人の男、カッコイイ男にはまだほど遠いようです。

景子さんはきょう、昼から予約が入っているそうで、まだ寝ています。何とはなしに寝顔を眺めながら、人生の難しさを痛感しています。

ちなみに、昨夜も私はソファで寝ています。景子さんと一緒に寝ることはありません。ソファで寝ると身体のあちこちが痛くなります。

さて、どうしたものか…どうしたものかも何も、とにかく仕事を何とかしなければならないわけですが。

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美味い寿司と酒を出してくれる場でスマホを出して写真を撮るなど無粋ですが、あまりにもキレイだったので1枚だけ撮らせてもらいました。サヨリです。

春の魚です。もうすぐ春です。