美人の心の闇
「私は普通に接してるのにあちらがぎこちないから困っちゃったわよ」― 日本全国を騒がせている“はれのひ”絡みの話を身近なところで聞くとは思ってもいませんでした。
景子さんはいま、はれのひの被害に遭った女の子たちが記念写真を撮るためのボランティアをやっています。
ネイルはもちろん、景子さんはヘアセットから着付け、メイクまでできるので、重宝されているそうです。
しかも超絶美人なので「あの人にお願いしたい」と女の子たちから指名が入るそうです。もちろん、指名制などなく、景子さんが行ける日しかいないのですが。
今日も自分のお店の合間を縫って少しだけ参加したのですが、今日の女の子の父親として来た人が以前、景子さんにしつこく言い寄っていたオッサンだったそうです。
女の子の母親=オッサンの奥さんも当然いるわけで、長年の客商売で慣れた景子さんは知らんぷりして接していたそうですが、オッサンのほうがソワソワして困ったそうです。
そんなことを露も知らない女の子=娘は「やだぁ、パパ、美人だから緊張してるの?」と屈託なく笑っていたそうで、景子さんに話を聞きながらその図が目に浮かび、爆笑してしまいました。
「私に女の子ができたら、成人式はうんと豪華にしてあげるんだけど…」
爆笑した後に景子さんがポロッとこぼしました。しかし、景子さんは当然、子どもを産むことができません。身体は男ですから。
成人式をやり直しに来る女の子たちはもちろん、ボランティアとして一緒に働いている人たちも、景子さんが男であることを知りません。美人すぎるので、嫌がらせをする人もいるそうです。
しかし、悩みを抱えていない人などこの世にいません。大なり小なり人には秘密があり、悩んでいるものですし、景子さんは「美人だから」とチヤホヤされてきたわけではありません。
…それはともかく、景子さん、泊まっていくということは私はソファで眠ることになるわけです。土曜日であればともかく、明日は仕事だからベッドでゆっくり眠りたいのですが。