もう泣かない
起きてから顔を洗おうと思って洗面所に行き、鏡に映った自分の顔をまじまじと眺めました。われながら、とにかくひどい顔です。
相変わらずブサイクですし、昨夜もいっぱい泣いたのでまぶたは腫れぼったいですし、人前に出られる顔ではありません。
私はもう書籍編集者ではありません。これまでの喜びや苦労は1時間以上も止まらなかった昨夜の涙と一緒にすべて流しきりました。
昨夜は苦労したときのことばかり思い出しました。
著者の意図を正しく汲み取れずに怒られたこと、刊行後に誤植が見つかって悔しかったこと、印刷事故が起きて返品・交換対応に追われたこと。
そして、書籍出版事業の廃止を伝えられたときのこと。
そのときは大変でしたし「こっちはどれだけ苦労してると思ってるんだ」と著者に対して文句を言いたいこともありましたが、いまはすべて良い思い出です。
「出版元は変わっても、これからもずっと読まれ続けるなら幸せなことですね」― 書籍の出荷や返品、在庫管理などを担当していたスタッフに言われたことです。
すべてではありませんが、これまで弊社から刊行したタイトルは今後、版権を買った他社から刊行されることになります。
カバーや表紙、奥付はすべて作り直され、それが弊社から刊行されたものである痕跡は消えていきますが、私が世に送り出したものであることは決して変わりませんし、それだけで十分です。
あらためて自分に言い聞かせます ― もう泣くなよ。