電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

続々・景子さん

こちらこちらの続きです)

景子さんと私は異様と言っても過言ではないほど趣味が合います。学生時代の友人以外でバルザックの『幻滅』が好きだと言った人は景子さんだけですし、フュージョンが好きという女性も滅多にいません。

好きなこと以上に嫌いなことが同じという点が大きいと思います。例えば、Tシャツを干すときにハンガーは必ず下から入れる、上から入れると首回りが伸びるから嫌い、といったものすごく些細なことです。

誰かと付き合うとき、好きなことよりも嫌いなことが合うかどうかが重要ではないかと思っています。後から好きなことを合わせることは簡単でも、嫌いなことを合わせるのは難しいはずです。

景子さんが本物の女性だったら、と考えたことは数えきれません。ただ、本物の女性だったら私のようなブサイクはそもそも相手にされないことでしょう。なかなか難しいものです。

「私が他の人と付き合ってもいいの?ずずずくんは平気?」

どうやら景子さんにいま「付き合ってほしい」と言ってきている男がいるようです。詳しく話しませんが、どうも景子さんが男であることを知っていて、その上で言ってきているもようです。

良いも悪いも景子さんと私は付き合っているわけではないので、ダメと言う資格は私にありません。少しモヤモヤするものがありますが、景子さんとは一般的な男女の付き合いとは少し違うものを感じていることも事実です。

「変なこと聞いてごめんね。忘れて」

景子さんは質問しておきながらいつも私に答えさせてくれません。答えを聞くのが怖いのか、表面的には強そうに見えますが、実際にはとても弱いことを私は知っています。私が答える前にはぐらかされてしまいました。

続きます。