電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

前職調査?

「御社に在籍されていたAさん(仮名)についていくつかお尋ねしたいことがあるのですが」

……

………

何だこれ?

しかも、会社代表や編集部ではなく、私のデスクの直通番号に電話がかかってきました。電話を受けた瞬間「ずずず様の番号でお間違いないでしょうか」と聞いてきたので、明らかに私にかけてきています。

Aさんは昨年末まで確かに弊社に在籍していました。編集部のアシスタントとして、DTPに出した修正指示と上がってきたゲラの突き合わせや、本文中の引用資料の確認などをお願いしていました。

仕事は丁寧で真面目、勤怠も問題なく、契約社員でしたが2年以上、勤務してもらいました。書籍出版事業の廃止がなければ契約を更新し、いまでも継続して勤務してもらっていたはずです。

しかし、電話をかけてきた相手はとにかく怪しいのです。名を名乗りませんし、なぜAさんのことを調べているのか、Aさんの情報を何に利用するのか、といったことを聞いても「それはちょっと…」と口を濁します。

ただ1点、なぜ私の直通番号を知っているのかという疑問に対しては「Aさんから聞きました。“私のことを聞くならずずずさんにお願いしてください”と言われています」と答えました。

そんな怪しさ全開でAさんについて教えてもらえると本気で思っていたのか、Aさんは何かまずいことに巻き込まれているのではないか…。そう不安に思ったところで1つの考えが浮かびました。

「もしかして前職調査ですか?」

「えぇ、まぁ…」と口を濁しますが、どうやらビンゴのようです。前職調査とは、企業が採用を検討している候補者について、本当に在籍していたかといったことから勤務態度などまで、以前の勤務先に問い合わせることです。

違法ではありませんが、本人の同意を得た上でなければなりません。また、個人情報保護法の施行やプライバシーに対する意識の高まりから、真っ当な企業であればそう簡単に情報を提供することはありません。

そもそも、調査会社などに依頼すれば結構な費用がかかるため、以前は一般的だったもののいまは滅多にやりません。信用が重視される金融機関ではいまでもあると聞きますが、本当かどうかは知りません。

私の直通番号を知っていること、“Aさんが私に聞いてほしいと言っていた”と言ったことを考えると、ほんの少しだけ警戒心が解けますが、それでも怪しさ満点であることに変わりありません。

「申し訳ありませんが、そのようなご質問にはお答えいたしかねます。失礼いたします」と言って電話を切りました。「えっ、あっ、ちょっと」という声が聞こえましたが、問答無用です。

Aさんもこういう電話があるかもしれないことを事前に教えてくれてもよかったのに。私のプライベートのメールアドレスを知っているはずですし、Facebookでもつながっていますし。

仮に本当に前職調査だったとしても、前職調査をするような企業は個人的にどうかと思いますし、それでも調査せざるをえないのであれば高いお金を払ってもっとしっかりした調査会社にお願いすべきではないかと思います。

聞かれるほうも決して良い気分ではありませんから。