電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

普通

私はごく普通の家庭を作ってみたいと思っていました。

自宅に帰ったらまずウイスキーの水割りを1杯あおります。それからパソコンの電源を入れ、立ち上がっている間に着替え、メールをチェックします。

いつでもどこでも仕事ができるよう、ITサポートに頼んで自宅でもメールを見られるように設定してもらいました。手元には2杯目のウイスキーの水割りがあります。

片道1時間ちょっとの帰りの間、通常であれば5~6通、いまのように校了間際であれば20通弱のメールが届いています。

急ぎのものに返信していくと、最初に返信したメールに対する返信があります。それに対応して…の繰り返しで30分ぐらいはメールをやりとりします。

私の親父はごく普通のサラリーマンで、帰宅後や土日祝日に自宅で仕事をしている姿など見たことがありませんでした。

当時はパソコンなどなく、自宅で仕事をしようにもできなかったという事情があると思いますが、休日は文字通り休日でした。

少年野球チームに入っていた私の練習に付き合ってくれたり、手先が器用だったのでDIYで色々なものを作ってくれたり、それが当たり前だと思っていました。

その頃の親父の年齢に近づいたものの、いまの私はまったく違う生活を送っています。マンションの暗い部屋に帰り、酒をあおりながら1人で仕事の続きをしています。

なぜこうなったと思うものの、新聞記者時代も書籍を制作していたときもそれはそれで充実していたので、これ以上を望むのは贅沢なのかもしれません。

その上、ふみちゃんのようなキラキラ女子を好きになるなど、ブサイクのくせに普通どころか大層なことを望んでいると思います。

でも、大好きなのですから仕方ありません。想いが届くことなどないと頭で分かっていても、理屈でどうなるものではありません。

どうしようもないので、せめてふみちゃんが元気で幸せになれるよう、近所の小さな稲荷社で毎日、お願いする日々が続きます。もう結構なお賽銭を入れたはずです。

明日は今度こそ入稿です。自分でやってしまえば楽なのですが、それはできず、指示を出してやってもらうしかありません。それでも分刻みで動きます。

もう少しだけがんばれ、オレ。