電車の中の恋人

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スピーカー

「君もスピーカーの1人としてシンポジウムに参加しなさい」― 学生時代にお世話になった教授からメールが届きました。

音楽や映画、写真、文学から食まで、フランス文化に関するさまざまなイベントが開催される“横浜フランス月間”なるものがあります。

横浜市が主導して2005年に始まり、派手ではありませんが、センスの良い展覧会に出会えたり、なかなか楽しいイベントです。今年は6月15日~7月15日の1か月間です。

公式イベントではありませんが、これに合わせて横浜市内の大学で仏文学に関するシンポジウムが開催され、教授がスピーカーとして参加するそうです。

そこに私も参加し、バルザックを主なテーマとしてスピーカーをやれ、と。スピーカーとは話題提供者、シンポジウムなどで議論の基となる講演をする人物のことです。

以前にも書きましたが、私は大学に残って仏文学の研究者になりたいと思っていました。しかし、院試で失敗するという人生最大のミスを犯しました。

ただ、就職したものの、仕事の合間を見つけて研究を続け、数年に1本のペースですが論文を書いてきました。いわゆる在野の研究者です。

院試に失敗したとき「私の期待を裏切った」としてこの教授とは疎遠になってしまったのですが、就職後に書いた論文をきっかけに元の良い関係に戻りました。

一昨年に書いた論文が学会の一部で話題になったことがありました。教授もいまでは学外での私の独自の活動を評価してくれています。

そして、今回の誘いです。誘いというか指示、命令です。「相変わらずオレ様だ」と苦笑しつつ、とても嬉しく思いました。

…が、シンポジウムは平日。しかも13時からってあなた、私がサラリーマンだってまったく考えていないでしょ。

1月~12月を会計年度とする弊社では今月、半期の売り上げを立てるために忙しくなり、有休を取得するのは難しいのです。

それに大学に所属する研究者たちに混じってサラリーマンが講演するとなると、それ相応の準備をしなければなりませんが、その時間はありません。

残念ですが、お断りするしかありません。参加したいのはやまやまですが、研究に専念できる身分ではないのです。

クビ宣告を受けた去年から、大学に戻ってあらためて研究者を目指そうと思うことがあります。独身ですので、自分が生きていくだけであれば何とでもなります。

仏文学に没頭したい今日この頃です。