タイムリミット
日本市場での書籍出版事業の廃止について、7月1日に公式にアナウンスされることが決まりました。これに先立ち、来週から著者への説明とお詫び行脚が始まります。
私はいま、最後に残った1タイトルの制作を進めていて、連休明けの時点で初校を作り上げていたのですが、著者への提出を保留させられていました。
そして今日、このタイトルを弊社から刊行しないことが決まりました。「6月末までに書店の店頭に並べる」という条件をクリアできないことが確定したからです。
6月末までに書店の店頭に並べるには6月20日(火)には取次に搬入していなければなりません。そのためには6月16日(金)に見本を納品してもらう必要があります。
さらに、そのためには6月7日(水)には印刷所に入稿していなければなりません。初校を提出してからまだ相当の工程が残っています。
初校の著者確認、再校制作、再校の著者確認、念校制作、索引制作・確認など、ざっと挙げただけでもやるべきことは山積みです。
私はこれまで6月末までに“見本納品”だと思っていました。連休明けに初校を提出すれば、著者の初校一発確認という離れ業で何とか間に合うと考えていました。
しかし、急きょ“書店の店頭に並べる”という条件に変わりました。私だけであれば徹夜の連続で何とかできますが、著者やデザイナーが関わってくるので不可能です。
このタイトルを含め、弊社の既刊書籍の版権は他社が引き取ることで話がまとまっています。このタイトルは今後、他社が制作し、刊行します。
「支社長も替わったし、このまま書籍出版事業が続くのではないか」――密かにそんなことを考えていましたが、現実は甘くありません。
それと同時に書籍編集者としての私は消えることになります。夕方にこの話を聞かされ、心にぽっかりと大きな穴が空きました。
倉庫の在庫はこれからすべて断裁されます。私が制作したものはもちろん、去っていった仲間たちが制作したものが切り刻まれます。
世に生み出された書籍には何の責任もないのに、誰にも読まれることなく、ゴミとして消えていきます。申し訳ない気持ちでいっぱいです。
自身で責任を取れない男ほど格好悪いものはありません。私はどうすれば責任を取れるのか、取ったことになるのか。
腹を切って済むならいくらでも切るのですが。