電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

見本納品の日

モニター上の無機質だったWord原稿が手に取れる形へと生まれ変わる ― この感覚を1度でも知ってしまうともうやめられません。書籍編集という仕事には中毒性があります。

見本を手にした瞬間、制作中の苦労をすべて忘れます。著者の無理難題やデザイナーへの指示、印刷会社とのスケジュール調整など、すべてが楽しかったことに変わります。

梱包を解き、カバーに貼られたPPのつやを見て、ページをぱらぱらとめくりながら紙の手触りを感じ、新品の匂いを思いっきり吸い込むのが、見本納品時の私の儀式です。

先月末まで制作していた書籍の見本がきょう納品されました。書籍編集部の残務処理ですし、私は進行管理とカバー周り、ところどころの素読みだけでしたが、それでもうれしいものです。

今回のタイトルはそれぞれ2月末と3月末で急に辞めてしまった派遣スタッフ2人がメインで制作しました。思うところはありますが、形にしてくれたことには感謝しています。

この2人もずっと編集の仕事を続けてきたので、見本を手にしたときの喜びを知っているはずです。見本を送ってあげようと思い、派遣会社に連絡してみました。

2月末で辞めた方は送ってほしいそうで、私に住所をメールしてきました。しかし、3月末で辞めた方は連絡がつかないそうです。

何度か電話してみたものの常に話し中になっているそうで、本当に話し中の可能性はありますが、着信拒否設定しているのかもしれません。

制作に携わった書籍が無事に完成したかどうかなど別に気にならないということであれば悲しいですが、連絡がつかないのであれば仕方ありません。

派遣会社は住所を知っているので「代わりにお送りしましょうか?」と言ってくれましたが、やはり送ってよいかどうかを本人に確認しなければなりません。

今月末には書店に並びます。どこかの書店で見つけてくれることを祈るのみです。