電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

外資系の人事部

外資系の人事部とは伝書鳩の集まりだと思います。米国本社からの指示をそのままリストラ対象者に伝えるだけです。そこにリストラ対象者への情や米国本社の考えを説明しようという姿勢はありません。

こんなやり方なら誰でもできます。人事の経験がない私でもできますし、人工知能を搭載したロボットでもできます。むしろ、人間同士だと“話せば分かる”と期待してしまいますが、下手に期待しない分だけロボットのほうが向いているかもしれません。

先日も少し触れましたが、日系企業の人事部は“情”を重んじます。いきなりクビを宣告されたら相手がどう思うか、次の就職先をどうするか、さらに相手の家族のことまで考えます。

ビジネスの現場に“情”を持ち込むことによる弊害は少なくありません。しかし、それでも日系企業はこうしたやり方で成長し、ひいては日本全体の成長につながっていったわけです。

「みんな同じ」「個性がない」「一億総中流」 ― 日本の国民性を揶揄する言葉としてよく使われます。しかし、私はこれが悪いとは思いません。日本人のうち天才は1%であって、私を含む99%は凡人です。日系企業のうち大企業は1%、99%は中小企業であることと同じです。

99%の凡人にいきなり「あなたはクビです。がんばって次の職場を“自分で”探しましょう」と宣告するのが正しいのかどうか。外資系はこういうやり方であり、それを理解した上で入社したのですが、やはり頭で分かっているのと実際に直面するのでは違います。

今日は10時~11時、14時~16時の2件の取材予定だったのですが、午後のほうが相手の都合で1時間遅れの15時~17時に変わったので、午前中の取材が終わってから一旦、帰社しました。

デスクについた途端、待ってましたと言わんばかりに人事に呼び出され、「退職合意書にサインしろ」「今日できないならいつだ」「先延ばしにすればするだけ条件は悪くなる」と半分、脅しを交えながら詰めてきました。もちろん、ICレコーダーでばっちり録音中。

「週末に友人の弁護士に相談したところサインする必要はないと言われた」「数日中にサインしなければならないという法的根拠は?」と返したところ、黙ってしまいましたが。ちなみに、弁護士に相談したというのはハッタリです。

今日の取材は営業と同行でした。編集部と営業部のフロアは別の階に分かれていて、そちらの状況は知らなかったのですが、もっと悲惨だそうです。もうすぐ勤続10年になろうという、外資系では稀有な社員も問答無用で切られるそうで、フロアの雰囲気は最悪とのことです。

私は“因果応報”という言葉を信じています。だから、自分がされて嫌なことは他人にしないように常に心がけています。

伝書鳩である人事部に何の悪意もなく、まさにマシンと化して自分の義務を果たしているだけであって、“いきなりクビとか言われても困るだろう”という思考回路は持ち合わせていません。

だから「クソ人事め!」と言うのは筋違いではあります。恨まれる役を押し付けられたかわいそうなピエロということもできます。ただ、やはりいつか自分に返ってくるのではないかと思います。

誰にとっても何の良いこともないのがリストラです。毎日楽しくなくてもよい、それほどやりがいがなくてもよい、普通に働けることを求めるのはそんなに贅沢なのでしょうか。