電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

待ちの時間

「そうだった、編集という仕事は待ちの時間があるんだった」

原稿をチェックし、それをDTPに修正してもらっている間、編集者は待ちの時間に入ります。通常は案件をいくつか抱えているので別件のチェックを進めますが、私はまだチームのサポートなので2件しか関わっていません。

しかも、その2件もそれぞれ30ページぐらいのものなので、どれだけ丁寧に目を通してもすぐ終わってしまいます。この会社でいつもお願いしているDTPは作業が決して速くない方なので、きょうはここまでかもしれません。

以前であれば待ちの時間を無駄に思い、早く上がってこないかとイライラしていました。しかし、いまは編集の仕事に戻れたことが嬉しく、待ちの時間でさえ心地良く感じます。

2年前のいまごろは書籍出版事業の廃止が決まってからちょうど1か月経ち、退職者が目立ち始めていました。営業スタッフは行き先が多く、数社に応募しただけですぐに決まっていきました。

私は異動の話が本決まりになりつつあり、しかし完全に信用することもできないので情報収集だけは続けていました。それと同時に異動を提示されなかったメンバーの行き先がないか、あちこちの伝手をたどっていました。

社内は新製品に携わってチヤホヤされている組と用無し組の真っ二つに分かれ、雰囲気は最悪でした。その中で私は望まぬ異動でありながらも残ることになったので、どちらの組にも属さない中途半端な存在でした。

ただ、このときすでに制作途中のタイトルをすべて片付けたら辞めることを決めていました。一緒にがんばってきた書籍編集部のメンバーが軒並み辞めていくのに自分だけ残るつもりはありませんでした。

そして昨年末ですべてのタイトルを片付けてから転職活動を始めたわけです。オンライン製品の開発チームのメンバーとしては中途半端、かといって書籍は終わったビジネスと見なされていたので中途半端、昨年は何度も存在意義を見失いかけました。

用無し組が去ってチヤホヤ組で固められた社内に残り、チヤホヤ組の筆頭の下に付き、やりがいのない時間をすごしましたが、何とか耐え切ってようやく編集の仕事に戻ってきました。頭がまだ少しぼんやりしていますが、すぐに本調子を取り戻せると思っています。

さすがにいまはまだありませんが、そのうち待ちの時間でいったん帰宅してから自宅で再開するということも増えてくるはずです。実はそれも楽しみで、時間に追われる生活が待ち遠しい日々です。