電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

残業代

「残業代はすべてお支払いします」

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…………マテ!

長いとは言えないまでも決して短いとも言えないこれまでのサラリーマン生活において、私はこれまで本当の意味での残業代を支給されたことがありません。

私は社会人になってから裁量労働制で働いてきました。クリエイティブな業務に携わる従業員に適用する「専門業務型裁量労働制」という形式です。

労働時間を管理することが適切ではなく、その業務遂行の方法を従業員の裁量に委ねるもので、記者や編集者、デザイナーのほか、研究開発職などに適用されます。

記者や編集者、デザイナーの仕事は労働時間を管理しにくいものです。誰の目にも見えず、そもそも自分自身でも仕事をしていると思えない時間が多くあります。

例えば、終業後や休日に書店で新たな企画につながりそうな情報を見つけ、それについて考え始める時間を労働時間と見なせるものでしょうか。

結果的にそれが形になり、会社の利益になれば、初めのきっかけも労働時間となるかもしれませんが、そのときはまだ何も分かりません。「仕事した!」とすることはとても難しいのです。

ただ、そのような時間をまったく考慮せず、給与を支払わないことはあまりにも不公平であるため「あなたの職種ならこれぐらいの残業はせざるを得ませんよね。だから先に残業代として支払いますね」というのが裁量労働制です。

がんばって毎日、定時で上がれば、残業代は丸々、得することになります。しかし、定時で終えられることなどあり得ませんし、契約時よりも多く残業するのが現実です。

私は新聞記者、編集者としてキャリアを重ねてきました。仕事に楽しさとやりがいを感じ、これまで残業代など意識したことがありません。「こんなに楽しい仕事なんだから残業代なんていらねー」と思っていました。

また、現実問題として労働時間をきっちり計ることができない職種です。東京・新橋でインタビューを受けるほろ酔いのサラリーマンが「残業できなくなって給料が減ったのが痛い」と答えているのを見てもまったく理解できませんでした。

次の会社では残業代をすべて支払ってくれるそうです。編集の仕事は相手ありき、データを印刷会社に渡す入稿直前は相手の都合で徹夜も珍しくありません。

私は残業代で稼ごうなどと思っていませんし、定時上がりが当たり前、残業は無能と見なされる外資系を経験しているので、残業などしたくありません。定時上がりはとても快感です。

ただ、どうしても残業せざるをえないときがあるわけで、そのときのお金をもらえるなど考えたこともありません。それを支払ってくれるとは驚きです。それとも、これが当たり前なのでしょうか。

仮に毎日1時間の残業をした場合の想定年収を聞き、驚きました。「す、好きなことをやらせてもらえる上にそんなにもらうつもりはありません!」と言いたくなりました。

色々とカルチャーショックを受けそうです。