電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

甘ったれ

「2年間という短い期間でしたが、大変お世話になりました」― 今朝起きたら馴染みのAORバーのオーナーから5月末で閉店する旨のLINEが届いていました。

AORとは“Adult-Oriented Rock”の略、つまり大人のロックで、ボズ・スキャッグスやスティーリー・ダン、TOTOなど、都会的で洗練されたロックのことです。メロウという呼び方も合います。

ジャズバーやソウルバーはたくさんありますが、AORに特化したバーはなかなかありません。先輩ミュージシャンに開店直後に連れていってもらい、CDとレコードのコレクション数やオーナーの造詣の深さに感動し、月に1~2回ぐらいのペースで通っていました。

ただ、時間帯によるのかもしれませんが、いつ行ってもお客さんがおらず、素人目に見ても繁盛しているとは言えませんでした。お酒も料理も美味しく、値段も手頃、雰囲気も良かったのですが、宣伝が足りていなかったのかもしれません。

不動産の賃貸契約は2年間が基本で、契約を更新して続けるか、それともダメージが浅いうちに撤退するか、飲食店経営の境目とよく聞きますが、オーナーは撤退を選んだようです。

ここ以外にも、ジャズバーやライブバーなど2年間で閉店したお店をいくつか見てきました。飲食店に限ったことではありませんが、自身で何かをやるということは本当に大変だと思います。

私は学生時代にずっとバイトでバーテンダーをやっていましたし、音楽が好きですし、料理が得意なので、自分でバーを経営したいと思うことがあります。

CDやレコードをかけるだけでなく、アンプやドラムセットを置き、ミュージシャンの溜まり場のような空間を作れたら…と考えることもあります。しかし、難しいだろうと思っています。

このようなお店を経営するには、これで儲けようと思うのではなく、潤沢な資金に基づき、趣味としてでなければなりません。

例えば、親の遺産でテナントビルを相続し、地上階はすべて店子が入り、その家賃収入だけで生きていけるものの暇だから地下でバーを経営する、という具合です。

私は、音楽はセミプロであるもののそれだけで生きているプロにはなれませんし、料理も素人に毛が生えた程度の腕で、すべてにおいて中途半端です。

「お前、お店とかできるんじゃないの?」と友人たちによく言われますが、そんな甘い世界でないことはよく分かっています。それに、仕事にしてしまったら楽しめないでしょうし。

今朝のLINEには、閉店のお知らせとともに「欲しいCDやレコードがあったらあげるよ」とも書かれていました。再起してもらいたいのでいただくのは気が引けます。

サラリーマンは本当に気楽な稼業だと思います。自分がやりたいことができていない、正しく評価されていない、というだけで辞めるのは甘ったれなのかもしれません。