電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

景子さん

自分で言うのもなんですが、景子さんは私のことが本当に好きなのだと思います。実際、口に出して言うことも多くあります。

初めて会ったときは私の友達の彼女でした。別れたと聞いて近づいたのは「弱っているところにつけ込めば…ムフ」というゲスな下心からでした。

しかし、それからドラマのようなすったもんだがあり、いつの間にかこんな関係になっていました。

合鍵を持ち、私がいないときでも部屋に出入りし、泊まっていくこともしょっちゅうであることを聞けば誰でも付き合っていると思うでしょう。

ただ、身体の関係になったことは一度もありませんし、泊まっても一緒に寝ることもありません。私が寝ているときに勝手にベッドに潜り込まれたことは何度かありますが。

景子さんほどの美人にはこれまでお目にかかったことがありませんし「嘘でしょ…」というぐらい性格も合います。好きなものはもちろん、嫌いなものが同じという他人に出会うことはなかなかありません。

「好きなものが同じ」ということが付き合うきっかけという話をよく聞きますが、嫌いなものが同じということのほうが重要なのではないかと常々思っています。

「景子さんが本当の女性だったら」と思ったことは数知れませんが、それは言わない約束です。そもそも、本当の女性だったら私など相手にされないわけで。

いまのような曖昧な関係をズルズルと続けるのは卑怯なのかもしれませんが、結論を出すことでお互いを失うのが怖いというのも本音です。ずるいと言われたら何も言い返せません。

ホント、仕事もプライベートも上手くいかねぇなぁ…。

明日の夜は景子さんとデートです。以前に2人で行った寿司屋を予約しました。大将は私のことを覚えてくれていて「またあの美人さんと一緒?それならがんばらなきゃ」と張り切っていました。

景子さんと待ち合わせると大抵、景子さんはナンパされてるし、2人で飲みに行くと同伴出勤だと思われるし、ブサイクはつらいよ。