電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

同期の奥さんの妹

「うちの嫁さんの妹、覚えてるか?向こうもまんざらでもないし、お前なら安心って嫁さんも言ってるし、どうだ?」

……

………

…………は?

ヤツの本社復帰の話を聞いていたと思ったら、どこでこんな話になったんだ?風邪気味のせいでアルコールが速く回ったのか、話の流れを覚えていないぞ?

今日は少し早めの16時にオフィスを出ました。寄り道する気など起きず、真っ直ぐ帰ろうとしていたところで、新聞記者時代の同期から電話がかかってきました。

「いま横浜に来てるんだけど、少し会えないか?」― 彼は昨年の4月に大阪支社に異動しました。彼についてはそのときに書いています。

wakabkx.hatenadiary.jp取材でこちらに来たのか、またしばらく会えないだろうと思い、重い身体を引きずって横浜駅で待ち合わせ、当たり前のように飲んできました。

それが何と1年で本社に戻ってくることになったそうです。しかも花形の政治部に。今日は1回目の引き継ぎで、3月末までに何度かこちらに来るとのことです。

古巣も人材不足に見舞われているようです。政治部の優秀な記者が辞めることになり、急きょ彼が呼び戻されることになったそうです。

「お前に言われたことをよく考えて、やっぱり転職しなくて良かったよ」と言う彼を見て、私の経験も無駄ではなかったのだと思いました。

彼は優秀な記者です。神奈川県を主戦場とする古巣の中で、大阪への異動は左遷の意味合いを含んでいましたが、彼を成長させることになると思っていました。

大阪に異動してからのことは直接、聞いていませんでしたが、他の同期から小耳に挟んでいました。スクープを連発し、全国紙から誘いがくるほど活躍していたそうです。

約1年ぶりに会った彼の顔は少し変わっていましたし、より多くの視点を身につけたことが話す内容から分かりました。腐らずに努力していたのでしょう。

もう1年ぐらい大阪にいたらより深みが出たかもしれませんが、短期間でも貴重な経験になったと思います。

活き活きと話す彼を横目で見ながら「自分は何をやっているんだろう…」と暗い気持ちになりましたが、彼は腐らずに努力したのです。私も見習わなければなりません。

…と、ここまで書いてきて、どこから冒頭の話になったのかどうしても思い出せません。なぜ彼の奥さんの妹の話になったのか。

彼の奥さんの妹には、彼の結婚式と、彼が新居を購入したときのホームパーティーで2回、会っています。彼の奥さんも美人ですが、負けず劣らず美人だったことを覚えています。

「結婚したんじゃなかったっけ?」― ずいぶん前の記憶を掘り起こしてみました。確かに結婚したそうですが、相手の浮気で離婚して、いまは実家で暮らしているそうです。

「お前はバツイチなんて気にするような小さい男じゃないだろ?」― 確かに私はバツイチなどまったく気にしません。いまがあるなら過去など関係ありません。どうでもよいことです。

しかし、いきなり「どうだ?」と言われたところで何とも言えません。こういうとき、押しの強い新聞記者はうっとうしいとしみじみ思います。

「彼女がいるわけじゃないんだろ?」― 彼のひと言でふとグラスを持ち上げた手が止まりました。確かに彼女はいませんが…。

「オレもいま仕事がちょっと大変だから、その話はまた今度な」とお茶を濁して帰ってきましたが、ふみちゃんが一瞬、思い浮かびました。

ふみちゃんは今朝もいませんでした。いい加減、忘れないと…と思いながら、1年半が過ぎました。もう少しで忘れられるでしょうか。