続・バイト遍歴
バイト遍歴の続きを書こうと思いつつ、インフルエンザが疑われたり大量の原稿を書いていたり、となかなか時間がありませんでした、ようやくバーテンダー時代のお話を。
バーには2種類あります。街中にあるオーセンティックバーと、シティホテルの中にあるホテルバーです。当たり前ですが、どちらが上でどちらが下ということはありません。
ただ、ホテルバーは当然、ホテル内にあるので、まずホテルに入るという動作が必要になります。街中のバーであれば、入り口のドアを開ければすぐ店内です。その違いが客層に少し影響を与えているかもしれません。
私がバイトしていたバーは、海外出張で宿泊している外国人や、その職場の同僚が多く訪れていました。もちろん、宿泊客でなく、純粋に飲みに来る人もいました。
私もそうでしたが、男はバーという空間に妙に憧れます。大人の空間というイメージがありますし、実際にそうなので、そういうところで飲むことによって自分が大人になったと錯覚できるからでしょう。
若いカップルが来ることもよくありました。よく分かっていないのに何とか彼女の前でカッコつけようとしている男がきたときはさりげなくフォローしました。
男なら誰しも好きな女の子の前ではカッコつけたいものです。がんばって女性をエスコートしているのであれば、男に恥をかかせてはいけません。バーテンダー一同、フォローします。
ただ、ごくまれにカッコつけが過ぎて、バーテンダーが困惑してしまう客がいます。ドラマや映画で見かける「彼女をイメージしたカクテルを」というアレを本当に言う人です。
「知らんがな」と喉元まで出かかったのを何とか抑え、微笑みを絶やさず女性に好みなどをいくつか聞いて作りますが、このような注文はやめましょう。バーテンダーは困ってしまいます。
フレンチを食べに行ってワインのことが分からなければソムリエに聞け、とよく言われますが、バーに行ってもそれと同じようにバーテンダーに聞けばよいのです。
例えば、フレンチを食べて、ワインをグラスで2~3杯飲み、ほろ酔いのところでもう一軒、静かなバーで飲むとなったときに彼女の分を注文する場合。
「彼女はお酒が好きなんですが、決して強いわけではありません。ここに来る前にスパークリングと赤、白をグラスで1杯ずつ飲んできました」
これだけでバーテンダーはあまりアルコール度数が高くないロングカクテルを選びますし、好きなフルーツや好きな色、炭酸が入っていてよいかなどいくつか質問してくれます。そうして好みを伝えればよいわけです。
バーテンダーにとって最も困るのは情報がないことです。分からないなら好みをたくさん伝えるべきですし、バーテンダーもそのほうが助かります。
先ほどのものに「彼女はこういうバーの雰囲気なんかも大好きで」と伝えると、アルコール度数が低めのショートカクテルを出してくれたりします。
ちなみに「彼女をイメージしたカクテルを」と頼まれたときに私がいつも出していたのが「コスモポリタン」というカクテルです。鉄板です。気になる方はGoogle先生に聞いてみてください。
バーというと堅苦しいイメージがありますが、そんなことはありません。酔いつぶれたり、騒いで周囲に迷惑をかけたりしない、という最低限のルールさえ守ればよいのです。
…って、こんなことを書いていると飲みたくなってきました。しかし、今日は財布がないのです。大人しくまっすぐ帰ります。
バーテンダー時代のお話はまだあるので、気が向いたらシリーズ化してみようか。