片想い
「もし異動願いが認められたら、ずずずはニューヨークに行くつもりかい?それなら僕もロンドンに戻るよ。ずずずがいないならここにいる意味がないし」
イギリス人の同僚と夕方、コーヒーを飲みながら話していました。私が異動願いを出していること、きょうダイレクターと面談したことはもちろん彼も知っています。
外資系では望まぬ異動は滅多にありません。先日、インドに飛ばされそうになったことは極めて例外であり、ダイレクターの怒りのほどがよく分かります。
一方、希望すれば比較的、認められやすいという傾向があります。そうは言っても、東京オフィスが属するアジア・パシフィック内であればまだしも、ニューヨークオフィスへの異動はかなり難しいのですが。
正直言って、環境が変わるのであればニューヨークでなくとも構いません。ワシントンでもシアトルでもロサンゼルスでもよいのです。
それこそロンドンやパリ、ローマ、バルセロナ、ベルリンといった欧州でもよいですし。ただ、やはりインドは御免被りたいところです。
「そういえばこの前、片想いしてるって言ってただろ?その子のことはどうするんだ?」
…よく覚えてんな、おい。別にどうもこうもないよ、一方的に片想いしてただけだし。
「“してた”だけってなんだ?何で過去形なんだ?まさかアプローチしたのか?それでどうだったんだ?」
……外人のくせに日本語の言葉尻を目ざとく捉えるんじゃない。その容姿でそこまで日本語がペラペラっていまだに違和感あるし。
しかし、いくら自ら希望しているとはいえ、支社長はやはり私を放出するつもりはないようです。
支社長の意向 > ダイレクターの意向 > 私の意向
です。私の意向など何の意味もありません。悲しいかな、これが組織の論理です。東京オフィスに残れ、というのであればもう少しマシな仕事を与えてくれてもよいのに。
もう10月です。気づいたらあっという間に年末になっているのでしょう。来年の今ごろはいったいどのようなことを書いているのでしょうか。
きっと同じだな、うん。