電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

幻滅

私はこれまでの人生で膨大な数の書籍を読んできました。小説はもちろん哲学書や古典、学術書、専門書など、文字通り活字を貪ってきました。

その中で学生時代から常にナンバーワンであり、今後もずっとナンバーワンであり続けるだろうと思う書籍が、フランスの文豪・バルザックが書いた『幻滅』です。

私は高校時代、まったく勉強しませんでした。正確には、教師に好かれるような試験勉強をしませんでした。そのため、通知表は常に真っ赤でした。

テニス部で好成績を収めていたので何とか留年は免れていましたが、それがなかったらクズ扱いされていたはずですし、実際にクズ扱いする教師もたくさんいました。

しかし、そのころから私が膨大な書籍を読んでいたことは誰も知りません。「どうせお前は分からないだろう」といった雰囲気で質問されたことに対してさらっと回答し、驚かれることも多々ありました。

高2のとき、新たに赴任してきた教師が担任になりました。これがまた変わり者で、授業以外は職員室でなく図書室にいるという男でした。

そして、この男が私に『幻滅』を教えてくれました。岩波文庫の『ゴリオ爺さん』を読んでいた私に「それを読んでいるなら次は『幻滅』を読まないと」と勧められました。

このやり取りが私を仏文学科に進学させ、仏文学者を目指させることになろうとは思いもしませんでした。結果的には仏文学者になれませんでしたが。

同期の助教授就任祝いパーティーを欠席することにし、返信はがきを投函した後、本棚から『幻滅』を取り、適当に開いた数ページを読んでみました。

何度読んだか分からないほどです。登場人物のひと言やちょっとした風景描写を目にしただけですぐにどの場面か分かります。

それと同時に、助教授となった彼を含むゼミの仲間たちと『幻滅』について朝まで議論したことを思い出しました。とても楽しい時間でした。

彼と私の違いは何なのか、差はどこにあったのか、いまだに分かりません。彼は研究者になり、私はサラリーマンになりました。

嫉妬心は永遠に消せないと思います。それはそれとして認めた上で彼の助教授就任を祝えるようになるにはもう少し時間がほしいと思っています。

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広告営業チームの案件も校了し、今日と明日は久しぶりに何もない週末です。今日は来週のライブに備え、ベースのメンテナンスをしました。

We exaggerate misfortune and happiness alike. We are never as bad off or as happy as we say we are.
― 我々は幸福も不幸も大げさに考えすぎている。自分で考えているほど幸福でもないし、かといって決して不幸でもない。

研究者にはなれませんでしたが、こんな穏やかな時間を持てるようになった私は決して不幸ではないと思っています。