電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

20年ぶりに、泣く

「7月28日取次搬入、7月31日出荷分をもって、書籍の出荷が終了になりました」― きょう27日、弊社の出版社としての機能が停止しました。

つまり、弊社は出版社でなくなりました。

出版業界の仕組みについて書き始めると長くなるので割愛しますが、書店などからの新規注文は受けず、あとは返品のみ受け付けることになります。

返品の受け付けは年内いっぱいです。1~2か月間はそれほどでもないと思いますが、10月を過ぎたあたりから一気に返品されるのではないかと見込んでいます。

そして、返品された書籍は断裁されます。書籍を保管していた倉庫との契約も年内いっぱいですので、年末にはすべての書籍が切り刻まれます。

帰り際、書籍の出荷や返品、在庫管理などを担当していたスタッフに呼び止められ、報告を受けました。ぷつり、と何か切れた音がしました。

その場では「これまでお互いにお疲れさまでした」と笑顔で握手して「お先に…」と別れましたが、少しこみ上げてくるものがありました。

私のデスクはビルの3階にあり、帰るときはいつも階段を降ります。3階から2階、2階から1階への階段を降り、ガマンできなくなりました。

1階のトイレの個室に駆け込み、泣きました。

抑えようと思っても涙が止まらず、文字通りあふれ出てきました。ハンカチを口に強く当てて、泣き声を抑えるだけで精一杯でした。

編集部のメンバーで手分けして書店を回って調査したときのこと、初めて重版がかかったときのこと、初めて書店でフェアを開催してもらったときのこと。

営業に「クライアントに書籍を褒められたよ」と言われたときのこと、執筆を依頼した著者に「御社なら喜んで」と言われたときのこと。

このようなことを“走馬灯のように”と言うのでしょう。書籍を制作しているときの楽しかったことと辛かったことが一気に思い出されました。

ここまで泣いたのはいつ以来か、正確なところは分かりません。とりあえず子どものころ以来なので“20年ぶり”としただけで、もっと泣いていなかったかもしれません。

トイレの個室には結局、30分ぐらいこもっていました。まぶたが真っ赤だったので、トイレを出るときには気を遣いました。

もしも願いが叶うなら、今夜だけでよいので、ふみちゃんの胸で大泣きさせてもらえないものかと思ったりします。

泣き疲れたときに目がなくなる笑顔を向けてもらえたら…と思ったりもしますが、それはブサイクには過ぎた願いです。

泣き虫ずずずです。